2026年9月28日月曜日

どこから触るか — 曲の中心を先に決めるミックスの順番

ミックスを開きました。トラックが30本ほどあります。

そこから手はどこへ行きますか。たいていは一番上のトラックです。キックが1番ならキックから、ボーカルが1番ならボーカルから。トラックリストの並びが、そのまま作業の順番になります。

ここからこじれます。トラックの並びは録音した順か作った順であって、その曲で大事な順ではないからです。

きょうは何から触るかを決める基準の話です。先に結論を書くと二行で済みます。その曲の中心が何かを先に決め、リズム隊を先に立てる。

① 順番がなぜ結果を変えるのか 🎚️

ミックスで下す判断は、ほとんどが相対的です。

ボーカルを3dB上げるというのはボーカルだけの話ではなく残り全部を3dB下げることですし、キックにコンプを掛けるのはキック一本ではなくベースとの関係を変える作業です。

だから先に決めたものが、あとのものの基準になります。最初に触ったトラックがその曲の目盛りになるわけです。

問題はここで起きます。何も考えずに1番トラックから始めると、たまたま1番にあったトラックが曲全体の基準になります。ハイハットを基準にして30本を合わせたあと、ボーカルを上げようとしたら場所がない。あれはこうして生まれます。

順番を決めるというのは、結局何を基準にするかを先に選ぶことにほかなりません。

② 先に訊くこと — この曲の中心は何か 🎯

基準を選ぶ問いはひとつに縮まります。

「この曲を、人は何で覚えるだろう。」

答えはだいたい二つに分かれます。

🔹 歌(song)が中心 — メロディと歌詞が先に残る曲。バラード、アコースティック、シンガーソングライター、多くのポップス。現場では歌ものと呼ばれます

🔹 トラックが中心 — 音色とグルーヴが先に残る曲。ハウス、テクノ、ヒップホップ、多くのエレクトロニック

この区別が作業の順番を分けます。

歌が中心ならボーカルから置きます。 ボーカルの音量と音色を先に決め、残りの楽器はそのボーカルが聞こえる場所を残す方向で合わせていく。ボーカルが基準で伴奏が従属です。

トラックが中心ならトラックから立てます。 キック・ベース・シンセの関係を先に作り、ボーカルやサンプルボイスはその上に乗る要素として扱う。こちらではボーカルが楽器のひとつに近い。

同じ3dBでも意味が変わります。歌が中心の曲でボーカルの3dBは曲全体が揺れる変化ですが、トラック中心の曲では要素ひとつの調整でしかありません。

③ どちらとも言えない曲は 🤔

もちろんきっぱり分かれない曲のほうが多い。R&B、シティポップ、バンドサウンドの大半がそうです。

そういうときに使える見分け方が二つあります。

ひとつ — 消してみる。

ボーカルをミュートして聴きます。それでも曲として聞こえるならトラック中心です。伴奏だけ残ったのに「まだ曲だな」と思えるなら、その伴奏は自力で立っている。逆に急に物足りなくなるなら歌が中心です。

ふたつ — コピーを想像する。

誰かがこの曲を真似するとしたら何を真似するかを考えます。メロディを口ずさむ曲か、ビートを手で叩く曲か。後者ならトラック中心です。

それでも迷うなら、歌中心に置いて始めるほうが安全です。ボーカルの場所を先に空けて始めれば、あとでトラックを大きくするのは簡単ですが、トラックをぎっしり詰めたあとにボーカルの場所を作るのは難しい。空いているものは埋められても、詰まっているものを空けるのは骨が折れます。

④ どちらであれリズム隊から 🥁

中心が決まったとして、実際の手はどこへ行くか。歌が中心でもトラックが中心でも、先に立てるのはリズム隊です。

矛盾に聞こえますがそうではありません。順番がこう分かれています。

🔹 何を基準にするか — 中心が決めます(ボーカルかトラックか)

🔹 どこから手をつけるか — リズム隊が先です

リズム隊を先に立てる理由は、それが曲の床で、残り全部がその上に立つからです。

🔹 音量の土台 — キックとベースがいちばん大きなエネルギーを占めます。ここが決まらないと残りの音量は全部が仮の値です

🔹 周波数の土台 — 低域は場所が狭い。キックとベースがその場所をどう分けるかが決まって初めて、他の楽器の低域処理も決まります

🔹 時間の土台 — 曲のグルーヴがここから出ます。リズム隊が揺れると、その上のすべてのタイミング判断が揺れます

歌が中心の曲だからとボーカルからフェーダーを上げると、まだ床がない状態でボーカルの音量を決めることになる。その値はキックとベースを入れた瞬間に意味を失います。

中心は目的地で、リズム隊は出発点。 二つは別の話です。

⑤ 歌が中心の曲、実際の順番 🎤

具体的に書いてみます。

🔹 1. キックとベース — 二つの音量関係と低域の配分を先に決めます。この二本だけ聴いて20分使っても惜しくない

🔹 2. ドラムの残り — スネア、ハイハット、オーバーヘッド。リズム隊を仕上げます

🔹 3. ボーカルを上げる — ここが要所です。リズム隊の上にボーカルを乗せ、この曲の最終的なボーカル音量を決めます。 残りがない状態なので大きく聞こえますが、その値をそのまま置いておきます

🔹 4. 残りの楽器をボーカルの下へ — ギター、鍵盤、ストリングス。ボーカルが聞こえ続ける線で入れます。聞こえなくなったらその楽器を下げる

🔹 5. そのあとで処理 — EQ、コンプ、空間系。音量関係が固まってからです

🔹 6. オートメーション — 区間ごとの微調整

3で決めたボーカル音量を4で動かさないことが肝です。楽器を足していてボーカルが埋もれたら、ボーカルを上げるのではなくその楽器を下げる。ボーカルを上げ続けると最初の順番が崩れて、結局は全部やり直しになります。

⑥ トラックが中心の曲、実際の順番 🎛️

こちらは違う道を行きます。

🔹 1. キック — 単体で置いて音色から決めます。トラック中心の曲ではキック一本が曲の性格を半分決めます

🔹 2. ベース — キックとの関係。サイドチェインを使うならここで掛けます

🔹 3. メイン要素 — その曲をその曲たらしめるリードシンセやループ。キックとベースの上にこれが乗って輪郭が出ます

🔹 4. 残りのリズム要素 — ハイハット、パーカッション、ライド

🔹 5. ボーカルやボイスサンプル — この段階で入ってきます。場所を空けてもらう対象ではなく、場所を見つけて入っていく要素です

🔹 6. 雰囲気の要素 — パッド、アンビエンス、FX

🔹 7. 処理とオートメーション

歌中心と3番・5番がまるごと入れ替わっているのが分かると思います。トラック中心の曲で「メイン要素」はボーカルではなく、その曲だと分からせる音です。それがシンセリードのこともあれば、サンプル一小節のこともある。

⑦ 順番を外したときに出る症状 🚨

順番が狂うと特定の症状が出ます。逆に言えば、症状を見ればどこで狂ったかが分かります。

🔹 「ボーカルが埋もれるので上げ続けてしまう」 — 伴奏を先に仕上げてからボーカルを入れました。場所がない状態でボーカルを押し込んでいる最中です

🔹 「低域が濁るのに出どころが分からない」 — キックとベースの関係を決めずに他を先にやりました。床のないまま階を積んだ格好です

🔹 「フェーダーを何度も触り直す」 — 音量が固まる前にEQとコンプを掛けました。処理が音量を変え、音量を変えると処理の反応もまた変わる

🔹 「一本ずつは良いのに混ぜると微妙」 — ソロで聴いて触りました。順番というより聴き方の問題ですが、結果は同じです

🔹 「平坦なのに何を触ればいいか分からない」 — 中心を決めていません。全部が同じ大きさにあると、何も前に出ません

最後の項目が実はいちばん多い。技術が足りないからではなく、何を聞かせたいかを決めていないから平坦な場合が多いのです。

⑧ この順番はいつ破っていいか 🔓

規則を書いたので例外も書かないと不公平ですね。

🔹 特定の音が曲のすべての場合 — ボーカルでもキックでもなく、ある質感ひとつが曲だという場合があります。そのときはそれを先に置きます

🔹 リファレンスがはっきりしている場合 — 目標の音が明確なら、順番より対照のほうが早い。比べながら合わせていけば済みます

🔹 ミックスではなく修正の場合 — 仕上がったミックスの一箇所だけ直すのに、頭から行く理由はありません

🔹 トラックが少ないとき — 5~6本なら順番を考えるほど複雑ではない

ただしトラックが増えるほど順番の効きが大きくなります。 40本で順番なしに始めると、腕前と関係なく時間が三倍かかります。

⑨ 順番が実際に節約してくれるもの ⏱️

最後にこの話の実益を書いておきます。

順番を決めて始めると音が良くなるのか。直接的にはなりません。同じ人が同じ道具で作業するのですから。

代わりに戻る回数が減ります。

ミックスで時間を食うのは判断そのものではなく撤回です。ボーカルを上げたり下げたり、キックを大きくしたり小さくしたり、あの往復ですね。そして撤回はたいてい基準があとから変わったせいで起きます。

基準を先に立てれば撤回が減り、撤回が減れば耳が疲れにくい。耳が疲れていなければ、後半の判断が正確になります。 ミックス後半に下す決定こそ実はいちばん繊細なものなのに、その頃には耳がすり減っているのがよくある話です。

順番は音質を作る技術というより、判断力を節約して使う方法に近いと思っています。

よくある質問

Q. キックとベースだけで20分も使っていいんですか?

A. いいです。むしろそのほうが効率的です。この二つの関係は曲全体の低域の基準なので、ここが決まると後の低域判断が全部速くなります。逆に雑に済ませると、他のトラックを触るたびに「低域が微妙だな」と戻ってくることになる。ただし20分をソロで使っては意味がありません。二つを一緒に鳴らして関係を見る時間である必要があります。

Q. ボーカル音量を先に決めろと言われても、基準は何ですか?

A. 絶対的な数値はなく、実務で使うのはリファレンス対照です。似たジャンルの完成曲を隣で鳴らして、ボーカルと伴奏の関係を比べる。一人で聴いて決めると、その日の体調で2~3dBは揺れます。あえて感覚的な目安を言うなら、最初に上げて「やや大きい」と感じる位置が、伴奏が全部入るとだいたい合っています。

Q. ジャンルによって違いますか?

A. 中心がどこかが違うだけで原理は同じです。ただ低域の比重が大きいジャンルほどリズム隊に使う時間が増えます。ヒップホップやハウスでキックとベースに作業時間の3割を使うのは過剰ではありません。逆にアコースティック編成ならリズム隊は早く終わり、ボーカルと楽器のバランスに時間が行きます。

Q. ミックスと編曲が混ざっている場合は?

A. いまはそれが基本に近いですね。このとき助けになるのは、編曲の判断をミックスの判断と取り違えないことです。「このシンセがボーカルを隠す」はEQで解く問題かもしれませんが、そのシンセがそもそも要らないという合図かもしれない。ミックスで解けない問題のかなりの部分は、編曲で解けば3秒で片付きます。

まとめ

最初の場面に戻ります。トラック30本、どこから触るか。

答えはトラックリストにはありません。曲のほうにあります。 この曲を人が何で覚えるかを先に決め、それが決まったら床から積む。リズム隊、中心の要素、残りの順に。

この順番が大した技術というわけではありません。ただ順番を決めて始めたミックスとそうでないミックスは、終わる時刻が違います。 そして時間内に終わったミックスのほうが、だいたい良い。すり減った耳で下した最後の判断が入っていないからです。

#DTM #音楽制作 #ミックス #ミキシング #ボーカル #リズム #作業手順 #宅録 #作曲 #サウンド

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2026年9月25日金曜日

ドラムを最後に直しても遅い — 作曲・編曲・プロデュースがひとつになった時代のドラム

昔、人に教えていた頃の話をします。

課題を受け取ると、画面がだいたい同じでした。ピアノロールに初期状態のアコースティックキットで打ち込んだ8小節があって、その上にコードが乗っていて、最後に「これから編曲します」と言って楽器を足していく。順番だけ見れば、間違っているところはひとつもありません。理論の授業で習ったとおりです。

ところが出来上がりが、いつも同じ場所で止まる。曲にはなっているのに音楽ではなくデモに聞こえるんです。本人もわかっています。何が問題かと聞くと、たいてい「ミックスが下手だから」と答える。違います。ミックスの前に、もう決着がついていました。

今日はその決着がどこでついたのかという話です。結論から言うとドラムです。そして、なぜドラムがそこまで重いのかをたどっていくと、作曲と編曲を分けて考える習慣そのものがどこから来たのかというところまで行き着きます。

スタジオでのドラム録音。この光景が当たり前だった時代に、今の作業順序がつくられました

スタジオでのドラム録音。この光景が当たり前だった時代に、今の作業順序がつくられました / 出典: The Blackbird Academy / CC BY-SA 2.0 via Wikimedia Commons

① みんな同じ順番で始めて、同じ場所で止まる 🥁

見ていた順番は、だいたいこうです。

🔹 1 — DAWを開いてドラムから打ち込む。音色はいじらない。最初からロードされているアコースティックキットのまま、キック・スネア・ハイハットを8小節

🔹 2 — その上にコードを乗せる。ここに一番時間をかける。進行を変え、ボイシングを変え、メロディを乗せる

🔹 3 — 全部できてから「編曲」をする。楽器を足し、ストリングスを入れ、最後にドラムの音色をあれこれ差し替えてみる

3で問題が起きます。ドラムの音色を変えた瞬間、曲が合わなくなる。808にするとコードが詰まりすぎ、ハウスのキットにするとテンポが合わず、ロー・ファイのキットを入れるとストリングスが浮く。結局、最初のアコースティックキットに戻ってきます。戻ってからミックスをいくらやっても音が変わりません。

理由は単純です。1の段階で曲の半分が決まっているのに、その決定を本人が一度もしていないからです。DAWが勝手にロードしてくれたキットがテンポ感と空間感とエネルギーを決めてしまい、あとの作業は全部その上に乗っただけ。最後にドラムだけ差し替えるのは、家を建て終わってから基礎を入れ替えようとするようなものです。

ひとつだけはっきりさせておきます。この順番が間違っているという話ではありません。バンド編成、ジャズ、シティポップのように人が実際に演奏することを前提に書く音楽では、今もこの順番が正しい。譜面で先に整理して、あとから人が音をつくる。それが正常です。問題はそちらではなく、その順番をそのまま今のスタイルの曲に持ち込むところにあります。

ではこの順番はどこから来たのか。生徒が自分で編み出した癖ではありません。もっと古い産業構造から降りてきたものです。

② 作曲家と編曲家が別々にいた理由 🎼

かつて作曲と編曲は、本当に別の人の仕事でした。職業名も別にあり、クレジットも別に刻まれました。

作曲家はメロディとコードを書く。それが曲です。その紙を受け取った編曲家が、どの楽器がいつ何を演奏するかを決めてパート譜をつくり、スタジオに集まった演奏者がそれを読んで弾く。指揮者が立っていて、マイクが何本か立っていて、一度に全員で録る。

1920年代後半、HMVスタジオの録音風景。曲・編曲・演奏・録音が一か所で一度に終わっていた時代です

1920年代後半、HMVスタジオの録音風景。曲・編曲・演奏・録音が一か所で一度に終わっていた時代です / 出典: Eden Studios / Public domain via Wikimedia Commons

この構造で大事なのは、音色を決める主体が作曲家ではなかったという点です。どのスネアを使うか、シンバルをどれだけ開けるか、キックをどこまで殺すかは演奏者とエンジニアの領分でした。作曲家が紙に書けるのは音高と長さと強弱まで。その先は人が入ってきて埋めていた。

それで分業が成り立ちました。あいだに紙があったからです。紙は音色を載せられない。載せられないから後で埋めるしかない。後で埋める人が別にいた、というだけの話です。

▶ The Wrecking Crew Official Trailer — 1960年代のLAでヒット曲の演奏を一手に引き受けていたセッションチームの話

今もオーケストラ録音はこの方式です。この世界では分業が有効なまま残っています

今もオーケストラ録音はこの方式です。この世界では分業が有効なまま残っています / 出典: Heinz Zeggl / CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons

ここまでは昔話ではありません。今も劇伴や大編成のセッションはこう回っています。問題は、この構造が別の種類の音楽にまで初期値として残っていることです。学校で習う順番、教則本が説明する順番、「とりあえず曲を書いてあとで編曲」という言い回し。全部この時代の名残りです。

そして、あいだにあった紙が、どこかの時点で消えました。

③ 今は「プロデュース」になっている 🎛️

DAWでつくったファイルがそのまま完成品になった瞬間、紙のやることがなくなりました。

以前はデモを渡せば誰かがちゃんとつくり直してくれた。今はデモがそのままリリースされます。 自宅でつくったファイルがマスタリングだけ通って配信に乗る。途中でつくり直してくれる人はいません。いても呼びません。呼べばその人の音になるからです。

すると、こうなります。

🔹 音色を選ぶことがそのまま編曲になる — どのキックにするかのほうが、どの楽器を足すかより曲を大きく変えます

🔹 編曲が曲のアイデンティティになる — 同じ進行、同じメロディでも、音が違えば別の曲として聞かれます

🔹 だから分離が成り立たない — 曲を書く人が音まで引き受けないと、曲が完成しない

ここは日本と海外で見え方が少し違うところです。日本では今も作詞・作曲・編曲がクレジットに並んで載りますし、アレンジャーという職能もきちんと生きています。なくなったという話ではありません。ただ、作曲とアレンジを同じ人が続けて担当するケースが当たり前になったというのが実感に近いと思います。トラックメイカーやプロデューサーという呼び方が増えたのも、その役割の重なりを言葉が追いかけた結果でしょう。

整理すると、以前は曲 → 編曲 → 音の順に人が交代していた。今はその三つがひとりの中で同時に起きる。順番ではなく、ひとつの仕事になったわけです。

そしてその「音」のまん中にドラムがあります。

④ なぜドラムが半分以上なのか 📊

大げさに聞こえる言い方ですが、分けて見ていくとそうでもありません。

🔹 エネルギーの大半がここに集まります — 曲の中で瞬間的に一番大きい音は、ほぼ必ずキックとスネアです。波形を見ればすぐわかります。リミッターが反応する場所もたいていここ

🔹 帯域を両端から押さえています — キックが低域の床を、ハイハットとシンバルが高域の天井を決める。真ん中に入る楽器の居場所は、この二つが残してくれた分だけです

🔹 テンポとジャンルを先に知らせます — ある曲を1秒聞いただけでジャンルの見当がつくのは、コードのせいではありません。キックの間隔とスネアの位置、そしてその二つの音色のせいです

🔹 聞く人の体が先に反応します — 首を縦に振らせるのは和声ではなくリズムで、そのリズムを運んでいるのが音色です

確かめ方があります。好きな曲を流して、EQで200Hzから下だけ残して聞いてみてください。次に8kHzから上だけ残して聞いてみる。どちらもドラムしか残りません。それでも、どの曲でどんな雰囲気かは聞き取れるはずです。

▶ Rick Beato — The Drum Sound That Defined Rock Music

ある時代の音を決めたのがコード進行ではなくドラムの音色だった、という例は何度も繰り返されてきました。そして、その繰り返しを決定的にした機械があります。

1980年のLinn LM-1。ドラムの音が「サンプル」になったことで、音色選びが作曲の領域に入ってきました

1980年のLinn LM-1。ドラムの音が「サンプル」になったことで、音色選びが作曲の領域に入ってきました / 出典: Linn Electronics / CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons

演奏者が叩いていた音がボタンの中に入った瞬間、音色は録音現場の問題からつくる人が最初に選ぶ問題に変わりました。ここから先は、選んだ瞬間がもう編曲です。

⑤ 今の音楽はジャンルが音色に入っている 🎚️

実験をひとつ勧めます。キック・スネア・ハイハットだけの単純なパターンをつくっておいて、音色だけ差し替えてみてください。パターンは1音も動かしません。

🔹 アコースティックキット → バンドのデモ

🔹 808のキックでサブが長く伸び、ハイハットが細かく転がる → トラップ

🔹 キックが四つ打ちで、ハイハットがその裏を埋める → ハウス

🔹 スネアの代わりにクラップが来て、キックが短く硬い → ポップス

🔹 キックとスネアをフィルターで削り、ざらついたノイズを足す → ロー・ファイ

同じパターンです。それでジャンルが五つ出てきました。ここに出ているのがこの記事の要点です。今の音楽で、ジャンルはパターンではなく音色に入っています。

▶ Servida Music — Analyzing 20 Genres And Their Unique Drum Patterns

もうひとつあります。808のように音程を持つキックを使うと、キックがベースの役割まで引き受けます。 そうなるとキックのピッチが曲のキーと合っていないといけないし、キックを選ぶことがそのままベースラインを書くことになる。音色の選択が和声の領域まで入ってきたわけです。作曲と編曲を分けて考えていると、この地点を説明する言葉がありません。

原宿の楽器店に並ぶTR-909とTR-808。この2台の音色が、そのままジャンルの名前になりました

原宿の楽器店に並ぶTR-909とTR-808。この2台の音色が、そのままジャンルの名前になりました / 出典: j bizzie / CC BY 2.0 via Wikimedia Commons

では、音色を選ぶというのは具体的に何を見る作業なのか。

⑥ 「いいドラム音源」の基準 🔍

サンプルパックを開くとファイルが数千個あります。ひとつずつ鳴らしているうちに時間がなくなります。基準がないとそうなる。現場で見ているのは、だいたいこの四つです。

🔹 もうミックスが終わっている音か — よくできた市販サンプルは素の録音ではなく、EQ・コンプ・サチュレーションまで通した結果物です。だから乗せるだけで曲になじむ。逆に「加工していない素の音」は、始めたばかりの人には一番扱いにくい素材です

🔹 トランジェントが立っているか — 叩いた最初の瞬間がはっきりしていないと、小さいスピーカーやイヤホンで生き残れません。ここが潰れたサンプルは音量を上げても埋もれます

🔹 尻尾がどれくらい長いか — キックとスネアの余韻の長さが曲のテンポと密度を決めます。速い曲に尻尾の長いスネアを使うとすぐ濁る。遅い曲に短いサンプルを使うと寂しくなる

🔹 音程があるか、あるなら何の音か — キックとタムと808には音程があります。曲のキーとぶつかるとベースが揺れて、原因を見つけるのがとても難しい

▶ Rick Beato — TOP 20 GREATEST DRUM SOUNDS OF ALL TIME

基準が立つと選ぶ時間が短くなります。そして選んだ後が本番です。

⑦ 置き方 — レイヤーと空間 🧱

プロのトラックのキックは、たいてい1個ではありません。役割を分けて重ねます。

🔹 サブ — 40〜60Hz あたりの低音の塊。体で感じる部分で、イヤホンではほとんど聞こえません

🔹 パンチ — 80〜150Hz の胴。キックが「キック」に聞こえる帯域です

🔹 クリック — 2〜5kHz の叩く音。ノートPCのスピーカーやスマホでキックの存在を伝える唯一の部分です

この三つを全部持ったサンプルが一発で見つかるのが一番いいのですが、なければ2〜3個重ねます。スネアも同じで、胴のあるスネアにクラップを重ねて幅を出し、必要なら短いノイズをもう一枚足します。

重ねるときの注意が一点。二つのサンプルの低域が互いに押し合うと、重ねたのに逆に小さくなることがあります。同じ帯域の波形が反対に動いて打ち消し合っている状態ですね。片方の頭を数ミリ秒ずらすか、位相を反転してみれば、どちらが正しいか耳ですぐ判断がつきます。

▶ Servida Music — I'll Teach You EVERYTHING About Layering In 5 Minutes!

残るのは空間です。今のドラムサンプルはたいてい乾いています。そのまま使うと、音が画面に貼りついたように平たい。短いルームリバーブをスネアとハイハットにだけ少しかけると、ドラムが部屋の中に置かれます。キックにはふつうかけません。低域に残響がつくと曲全体がぼやけます。

実際のドラム録音のマイク配置。ソフトでレイヤーを積むのは、この配置を真似る作業です

実際のドラム録音のマイク配置。ソフトでレイヤーを積むのは、この配置を真似る作業です / 出典: Marc Wathieu / CC BY 2.0 via Wikimedia Commons

ここまでが道具の話です。あとはこの道具をいつ使うかですが、じつはそこがこの記事で一番大事な部分です。

⑧ 順番をひっくり返すと作曲が楽になる 🔄

勧める順番はこうです。

🔹 1 — 曲を書く前にドラムの音色から決める。キック・スネア・ハイハットを、その曲で使う音として確定させる

🔹 2 — その音で8〜16小節のグルーヴを仕上げる。ループで流しっぱなしにする

🔹 3 — その上にベースを乗せる。キックとぶつからない場所を探す作業が、もう編曲です

🔹 4 — そのあとでコードとメロディを乗せる

なぜ楽になるのか。選択肢が減るからです。

ドラムのグルーヴが先に確定すると、テンポが決まり、空いている場所が目に見え、曲のエネルギーの水準が決まります。その状態でコードを乗せると「ここに合うコード」が数個に絞られる。逆に白紙からコードを書き始めると、可能な選択が無限にあります。無限の選択の前で人は止まります。生徒がコード進行で何日も迷っていた理由はここにありました。

▶ Metro Boomin — start with your drums first sometimes

この順番に変えると「編曲」という別工程が消えます。ドラムを選んだ時点でもう編曲が始まっていて、ベースを乗せるときも編曲をしていて、コードを入れるときも同じ。作曲と編曲とプロデュースがひと塊で転がっていきます。②で話した分業がなぜ成り立たないのか、ここで実感として入ってくるはずです。

⑨ だからみんな音づくりに時間を使う ⏱️

プロデューサーの作業時間の内訳を覗くと、比率が意外です。コード進行を決めるのにかかる時間より、キックを1個選ぶのにかかる時間のほうが長いことがふつうにあります。1曲でキックを20個くらい差し替える人もいます。

無駄に見えますが、そうではありません。ここまで話したとおり、その選択が曲の半分を決めるので、そこに時間を使うのが合理的なのです。

▶ Kenny Beats: No More BORING Drums

もう一歩進むと自分のキットができます。何曲かつくっていると、いつも戻ってくるキック、いつも使うスネア、毎回同じやり方で積むレイヤーが決まってきます。それをひとつのキットとして保存しておいて、次の曲の出発点にする。

これがプロデューサーのシグネチャーサウンドになります。聞いた瞬間に誰の曲かわかるトラックがありますよね。あれはたいていメロディではなくドラムです。プロデューサータグを曲の頭に差し込む文化も、結局は同じ話です。音そのものが署名になった。

よくある質問

Q. バンドの曲をつくっているのですが、この順番にすべきですか?

A. いいえ。人が演奏することを前提に書く音楽は、従来の順番のままで問題ありません。ただその場合も「どんなドラムの音で録るか」は先に決めておいたほうがいい。結局は同じ話です。音を後回しにしないこと。

Q. アコースティックのドラム音源は使ってはいけませんか?

A. 使って大丈夫です。問題は音源ではなく、何も選んでいない初期値を使うことです。曲に合うキットを選んでルームマイクの比率まで決めたなら、それはもう音色を選んでいます。

Q. サンプルパックはどれを買えばいいですか?

A. ジャンルを絞って買ってください。「万能パック」より、自分がつくりたいジャンル一本に寄せたパックのほうがずっと使えます。そして買ったパックから実際に使うサンプルは、たいてい5個を超えません。その5個を見つけるのが目的です。

Q. ドラムを先につくるとメロディが浮かびません。

A. グルーヴを詰め込みすぎている可能性が高いです。ドラムが隙間を残さないと、メロディの入る場所がなくなります。ハイハットを半分に減らしてみてください。

Q. キックとベースがずっとぶつかります。

A. キックを先に決めたなら、ベースをそのキックに合わせて削るのが順番です。サイドチェインで押さえる方法もあるし、帯域を分けて使う方法もある。どちらにしてもキックが基準という前提は同じです。

まとめ

あのときの生徒に今答えるなら、こう言うと思います。

ミックスが下手だったからではありません。ドラムを最後に選んだことが問題でした。曲を全部書いてから音を着せようとしたので、音を変えられない状態になっていたんです。

作曲と編曲を分けて習ったことは間違いではありません。実際に分かれていた時代があって、その時代にはそれが正しかった。ただ、あいだにあった紙と演奏者が消えました。今は曲を書く人が音まで決めて、音を決めた瞬間がもう編曲で、その全体をプロデュースと呼びます。

だから順番を変えてみてください。ドラムを先に選んで、その音の上に曲を書く。作曲と編曲は順番ではなくひとつの仕事なのだということが、そのとき手でわかるはずです。

#DTM #音楽制作 #宅録 #ドラム #ビートメイキング #編曲 #トラックメイク #サンプル #808 #作曲

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2026年9月24日木曜日

良かったほうが先に消えた — JD-990とJV-1080、そしてボード1枚の値段

中古市場でこんな光景を見たことがあります。ラックの音源モジュールが2万円ほどで出ている横で、その機械に挿す拡張ボードが1枚3万円で別に売られていました。

本体より部品のほうが高い。しかもその部品は回路ではなく、8MBの音の塊でした。

そこに至るまでに30年かかっています。始まりは1年のあいだに出た二台の機械です。

① 1993年と1994年 🎚️

1993年、ローランドがJD-990を出します。価格はアメリカで2,195ドル、イギリスで1,445ポンド。名前に「Super JD」が付いていて、先に出ていたJD-800というシンセサイザーのラック版のように紹介されました。

正確にはラック版ではありませんでした。機能が増えすぎてJD-800とプリセットの互換がないのです。同じ名前を使う別の機械に近い。

翌1994年、同じ会社がJV-1080を出します。2Uラックに収まる音源モジュールで、通称は「スーパーJV」でした。

二台が1年違いで出ました。そして30年後、片方は収集家が探す物になり、もう片方は2万円台で転がっています。

転がっているほうが当時勝った側です。

ローランド JV-1080。90年代のスタジオラックでいちばん見かけた顔です

ローランド JV-1080。90年代のスタジオラックでいちばん見かけた顔です / 出典: Matt Perry / CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons

② JD-990は何を多く持っていたのか 🔬

スペックを並べるとJD-990のほうが見劣りします。

🔹 同時発音 24ボイス(JV-1080は64)

🔹 パート 7 + ドラム1(JV-1080は16)

🔹 ウェーブROM 6MB・195波形(JV-1080は8MB)

🔹 拡張ボード 1枚(JV-1080は4枚)

数字だけ見れば勝負になりません。ところが数字に出ないところにJD-990の中身がありました。

🔹 リングモジュレーション — 二つのオシレーターを掛け合わせて金属的な倍音を作ります。鐘やガラスのような音はここから出ます

🔹 オシレーターシンク — 片方の波形がもう片方を強制的にリセットします。裂けるようなリードの正体です

🔹 FXM(周波数クロスモジュレーション) — 波形同士で周波数を揺らして、不協和に近い倍音を乗せます

🔹 直列デュアルフィルターのストラクチャー — フィルターを二段重ねて使います。代わりにポリを2つ消費します

🔹 マトリクスモジュレーション — 何が何を揺らすかを自由につなげます

🔹 アナログフィール — 波形にごく微細なピッチの揺れを加えます。昔のアナログシンセの不安定さを真似た機能です

🔹 LFO波形にサイン・台形に加えてカオスが入っています

🔹 ステレオ4系統、つまり追加4アウト

ローランド JD-990。同じ会社が1年早く出したほうです

ローランド JD-990。同じ会社が1年早く出したほうです / 出典: Matt Perry / CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons

整理するとJD-990はサンプルを再生する機械ではなく、サンプルを材料に使うシンセサイザーでした。PCMをオシレーター扱いして、その上で合成をやる構造です。

その結果が今も語られるパッドとフィルターの音です。フェイスレス〈Insomnia〉で曲を引っ張るあのピチカートのフックもJD-990から出ています。プロディジー、アポロ440、ATB、クラウス・シュルツェ、ヴァンゲリスがこの機械を使いました。

③ ところが市場は1080を選んだ 📈

JV-1080は正反対の設計でした。

🔹 64ボイス16パート — 曲ひとつをこの一台で覆えます

🔹 32ビットRISCプロセッサ66MHz駆動

🔹 8MBの中に448のサンプル — 生楽器、ベース、パッド、リード、オルガン、コーラス、ドラムキット

🔹 パッチひとつにトーンを4つ重ね、トーンごとにフィルター・エンベロープ・エフェクトを別にかけます

🔹 拡張スロット4つ、全部埋めると42MB

合成の構造は単純でした。トーンあたりのフィルターが12dB/octの一種類だけで、JD-990にあったリングモジュレーションもオシレーターシンクもありません。

それが問題になりませんでした。人がこの機械に求めたのは音を削ることではなく、すでに完成した音を速く取り出すことだったからです。

ユーザーの顔ぶれがそれを示しています。ハンス・ジマー、マイケル・ジャクソン、ザ・ネプチューンズ、ポール・ヴァン・ダイク、デペッシュ・モード、ヴァンゲリス。ゲーム音楽ではグラント・カークホープ、ネイサン・マクリー、安藤浩和、永田権太が使い、川井憲次もユーザーの名簿に入っています。

ジャンルが噛み合わない名前ばかりです。映画のスコアとユーロダンスとゲームBGMが、同じラック一台を使っていました。

JD-990は1996年に生産終了します。3年もちませんでした。JV-1080は2000年まで生き残り、そのあいだ同じエンジンがXP-50という鍵盤型ワークステーションにもそのまま入りました。

④ ローランドが売ったのは機械ではなく互換性だった 🔗

なぜ1080がそこまで売れたのか。性能のせいではありません。どこにでもうまく噛み合ったからです。

🔹 16パートにGMバンク内蔵 — 人が作ったMIDIファイルをそのまま開いても音が出ます。受け取ったデータを再生するだけの場面でこれが効きました

🔹 エンジンが製品群を横断します — JV-1080の音源部がXP-50ワークステーションにそのまま入りました。ラックから鍵盤に替えても音が変わりません

🔹 ボードが機種を横断します — 同じSR-JV80ボードをXP-50・XP-60・XP-80・JV-1080・JV-2080・XV-5080に挿せて、JD-990にも1枚入ります

🔹 後の世代が前の世代を吸収します — XV-3080はJV-2080の音をすべて積んで出てきました

これが何を意味するか。ローランドの製品を一度買うと、次もローランドを買うのが合理的になる。ボードが使い回せて、データが開いて、音がつながるからです。

競争相手は他社のもっと良い機械ではなく、すでに自分のラックにある物とどれだけ噛み合うかでした。その勝負でローランドが勝ちました。

⑤ 機種ごとに何が違うのか 🧩

系譜を整理しておくと中古を見るときに楽です。

🔹 JV-880 — 1Uの小さい兄弟。同じ系列の入門の位置でした

🔹 JV-1080(1994) — 2U、64ボイス16パート、スロット4つ。シリーズの基準点

🔹 JV-2080(1997) — 同時発音はそのままでスロットが8つに増えました。フィルターが4種(ローパス・バンドパス・ハイパス・ピーキング)になり、エフェクト40種のうち3つを同時にかけます。パッチ768。そして8台を束ねて512声まで伸ばせました

🔹 XV-3080 — 同時発音が128に跳ねます。トーンごとにステレオ波形を再生します。SRXとSR-JV80の両方を受け、内部にJV-2080の音すべてとJD-990の波形集が入っています

🔹 XV-5080 — フラッグシップ。128ボイス32パート、ウェーブ64MB、SRX4枚 + SR-JV80 4枚を同時、SIMM2スロットに最大128MB。そしてローランド・アカイのライブラリとWAV・AIFFを読みます。 SCSI内蔵、8アウトにS/PDIFとR-BUSまで

最後の行が重要です。XV-5080まで来ると音源モジュールがサンプラーの場所まで越えてきます。 よその会社のライブラリ形式を読み込むところまで行きました。

⑥ SR-JV80という発明 💾

このシリーズの本当の商品は本体ではなくボードでした。

SR-JV80は1枚8MBのPCMウェーブと、その音に合わせたパッチが一緒に入った拡張カードです。10年かけて22種類が出ました。

🔹 01 Pop / 02 Orchestral / 03 Piano / 04 Vintage Synth / 05 World

🔹 06 Dance / 07 Super Sound Set / 08 Keyboards of the 60s & 70s

🔹 09 Session / 10 Bass and Drums / 11 Techno / 12 Hip-Hop

🔹 13 Vocal / 14 Asia / 15 Special FX / 16 Orchestral II

🔹 17 Country / 18 Latin World / 19 House

🔹 97 Experience III / 98 Experience II / 99 Experience

一覧を見ると、これがどういう商売だったかが見えます。ジャンル一つにカード一枚。 オーケストラが要るなら02番を、テクノをやるなら11番を、ヒップホップなら12番を買えばよかった。

ここに事件がひとつあります。06番のDanceボードは著作権の問題でローランドが配布を中止しました。 サンプルの出どころに問題があったと言われていますが、ローランドが詳しい経緯を公表したことはありません。ここでは配布が止まったという事実までにとどめておきます。法的な判断ではなく公開された事実を整理したものなので、実際に権利関係が絡む話なら専門家に確認してください。そういう経緯もあって、このボードは今も中古市場で別枠の扱いを受けます。

もうひとつ面白いのが04番のVintage Synthボードです。このカードの中にはJD-990専用にプログラミングしたパッチが255個入っています。市場から押し出された機械を、市場を取った側のボードが気にかけていたことになります。

JV-1080の中。この場所にカードを4枚まで挿します

JV-1080の中。この場所にカードを4枚まで挿します / 出典: Raymangold22 / CC0 via Wikimedia Commons

⑦ みんな同じボードを挿した 🌀

ここからがこの記事の言いたいことです。

ボードを売るというのは「どんな音でも出せるようにする」という約束です。22種もあるなら組み合わせは無数に出そうに見えます。ところが実際に起きたのは逆でした。

みんな同じ数枚を買いました。

オーケストラが要る人は02番を買い、ヴィンテージシンセの音が要る人は04番を買った。それがその用途の正解だったからです。だから90年代後半のドラマBGMの弦と、ゲーム音楽のオーケストラと、CM音楽のパッドが、同じ8MBから出ていました。

これは誰のせいでもありません。良い音の入ったカードがあって、それを買って使うのは合理的な選択です。ただ、全員が合理的に選ぶと結果物は収束します。

今、みんな同じプラグインを開いて同じプリセットを選ぶという話をします。あの現象は新しくありません。30年前はそれがカードの形をしていただけです。

違いがひとつだけあります。当時はカードが8MBで、一台に4枚しか挿せませんでした。今は容量の制限がない。制約が消えた分だけ収束が速くなっただけで、構造はそのままです。

⑧ 本体より高いボード 💸

相場を見ると、その8MBが今どう扱われているかが出てきます。

🔹 JV-1080本体 — 46,618 ~ 68,690円。日単位で追跡しているところの平均が約268ポンドで、ボードなしの個体は150~300ドル

🔹 SR-JV80-04 Vintage Synthボード1枚 — 187ドルから

🔹 SR-JV80-02 Orchestralボード1枚 — 58ドルから

04番1枚が本体ひとつ分の値段に並ぶ。スロット4つを人気カードで埋めるとボード代が本体代を超えます。

「JV-1080が最近また人気で値上がりした」という話をよく聞きますが、半分だけ当たりです。上がったのは機械ではなく、その中に入れる音のほうで、本体は相変わらず安いままです。人がお金を出しているのは8MBのカードでした。

考えてみれば不思議でもありません。本体はその音を再生する装置でしかなく、欲しいのは音なので。ローランドが30年前に立てた構造が、今の市場でもそのまま動いているわけです。

ところがボードも消耗品です

ここで押さえておくことがあります。ボードの値段が本体を超えるというのは、そのボードが生きている場合の話だという点です。

SR-JV80はROMチップと小型部品を載せた基板1枚です。30年経った基板ですから、当然老います。中古で出回る個体によく見られる状態がこれです。

🔹 部品が溶け出した跡 — 基板上の小型部品の周囲に茶色や白の染みが広がっている個体があります。液漏れが進んだ状態で、放っておくと下の配線まで食われます

🔹 接点の酸化 — スロットに挿さる金属端子がくすんだり斑になったり。音が出たり出なかったりする原因の第一位がこれ

🔹 基板の変色・腐食 — 保管環境が湿っていた個体。特に長くラックに挿したまま熱を受けたボードに出ます

🔹 ピンの曲がり — 抜き挿しを繰り返した痕跡。人気ボードほど手が入っています

だからボードは写真と説明だけ見て買うと危ない品物です。確認することはこうなります。

🔹 基板の両面写真をお願いします。片面だけの出品は、たいてい反対側に理由があります

🔹 部品の周りに染みが広がっていないか見ます。写真でもだいたい分かります

🔹 実機に挿して音が出るのを確認した出品かを訊きます。「未確認」「部品取り」と書かれているものは、その言葉のとおりです

🔹 端子が均等に光っているか見ます。一列だけ妙にくすんでいたら接点の問題です

値段だけ見ると8MBのカードが2万円台というのは妙に感じますが、生きている8MBはそれより希少です。 新しく作られない品物なので、壊れた個体が抜けていくぶん全体の数が減り、残ったほうの値段がそれを映します。

もうひとつ。ボードを確保したのに本体が死ぬこともあります。JV-2080やXV世代は本体側の電解コンデンサの液漏れが報告される機種です。ボードの状態だけ気にして本体を見ないと、同じ落とし穴に反対側から落ちます。

SR-JV80ボードの実物。この1枚が8MBです

SR-JV80ボードの実物。この1枚が8MBです / 出典: Gustavo.paiva / CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons

⑨ いちばん洗練されていない機械がいちばん綺麗に聞こえる理由 ✨

JV-1080はこの系譜でいちばん作り込まれていない部類です。

JD-990にあったリングモジュレーションもオシレーターシンクもFXMもない。フィルターは12dBの一種類だけで、JV-2080で増えたフィルター4種もありません。XV世代のステレオ波形も32パートもない。上にも下にも押されます。

ところが今みんなが探しているのが、よりによってその機械です。

理由は結局、その洗練されていない状態が90年代そのものだからです。12dBフィルターを通った硬いPCM再生音、四つのトーンを重ねて作った分厚いのにどこか平たいパッド、工場出荷のまま使った感じの残るプリセット。当時は「ただの初期値」だったものが、今は時代の刻印になりました。

テーム・インパラがこの機械のユーザー名簿にあるのは偶然ではありません。90年代に育ちながら聞いた音をもう一度取り出すのに、この機械より速い道がないので。

▶ Tame Impala - The Less I Know The Better — 90年代の質感をいまの側へ引っ張ってきた音

洗練させようとした機械はその時代を超えようとして、だから時代を証明できない。普通によく売れた機械がその時代の標本になります。

最後にもうひとつ。前のほうでXV-3080の中にJD-990の波形が入っていると書きました。3年で消えた機械でしたが、その音は勝った側の後継機に載って売られ続けました。

機械は負けて音は残った。このシリーズの話でいちばん正確な文がそれです。

よくある質問

Q. JD-990とJV-1080のどちらか一台なら?

A. 用途がまるで違います。完成した音を速く取り出したいなら1080、音を削って自分のものにしたいなら990です。990はPCMを材料に使うシンセサイザーに近いので、プリセットを眺めて終わりにすると元が取れません。逆に1080を買って深いエディットをやろうとすると、すぐ限界が来ます。

Q. ボードはどこまで買えばいいですか?

A. 本体を買った理由によります。特定の時代の音が目的なら04 Vintage Synthと02 Orchestralの二枚でだいたい片付きます。Experience系(97・98・99)は複数のボードから抜いて集めた詰め合わせなので、何が要るかまだ分からないときに一枚で広く見るのに向いています。逆にジャンル専用のボードは、そのジャンルを実際にやるときだけ値段分の働きをします。

Q. 実機なしでこの音は出せませんか?

A. この時代のROMplerの音はサンプルパックやライブラリでかなりの部分が手に入ります。ただ実機にあるのは音そのものより、4トーンを重ねてトーンごとに違うフィルターをかける、あの構造から出てくる結果物のほうです。それが要らないなら、わざわざラックを買う理由は薄いと思います。

Q. 今買って故障の心配はありませんか?

A. この系列は90年代中後期の機械なので、80年代のアナログよりは状態が良いほうです。ただしバックアップ電池、電解コンデンサ、LCDのバックライトは年式なりに来ていると見るのが妥当でしょう。本体より先に確認すべきなのはボードです。 ⑧に書いたとおり部品が溶け出したボードが実際に出回っていて、あれは値切って買う品物ではなく買わない品物です。音が出ないスロットが単なる接触不良というケースも多いのですが、ボード側がすでに終わっている例も同じくらいあります。

まとめ

最初の光景に戻ります。本体2万円、ボード3万円。

おかしく見えますが、市場は正直に値を付けただけです。人が欲しかったのは機械ではなく、その中の8MBで、ローランドは30年前からその構造で売っていました。本体は再生装置で、商品は音だということ。今わたしたちがプラグインやサンプルパックを買うやり方は、あのときに出来上がっています。

そしてこのシリーズが残したもう一行は少し苦い。良く作った機械が長く売れるわけではありません。よく噛み合う機械が長く売れます。 JD-990は音で勝ちながら3年で降り、JV-1080はスロット4つとGMバンクで6年もちこたえて、ひとつの時代の初期値になりました。

ただ時間が経つと順番がまた入れ替わるようです。今値が付いているのは990で、愛されているのは1080。二台が別のやり方で生き残ったことになりますが、機械の立場としてどちらが良い結末なのかは、正直よく分かりません。

#DTM #音楽制作 #ローランド #JV1080 #JD990 #音源モジュール #拡張ボード #機材の歴史 #宅録 #作曲

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わざと入れるノイズ — ロー・ファイが欠点をジャンルに変えるまで

作業しながらYouTubeでロー・ファイの配信を流している人は多いと思います。静かなピアノ、鈍いドラム、そしてずっと敷かれているジリジリしたノイズ。

そのノイズをひとつずつ分解してみると妙なことに気づきます。レコード盤の傷の音、テープのサーというノイズ、つぶれた高音、揺れるピッチ。エンジニアが何十年も消そうとしてきたものばかりなんですね。それがいまはジャンルの看板になっている。

① もとは悪口でした 🗣️

ロー・ファイ(Lo-Fi)はLow Fidelityの略。忠実度が低いという意味です。

反対語のハイ・ファイ(Hi-Fi)のほうが先に広まりました。20世紀半ばのオーディオ業界が「原音にどれだけ忠実に再生できるか」を売るときに使った言葉です。ノイズが少なく、帯域が広く、歪みがないのが良いものだった。

ということはロー・ファイは、その基準に届かない音を指す言葉でした。安い機材、良くない録音環境、カセットで落としたコピー。褒め言葉ではなかったわけです。

この言葉がひっくり返るまでにはいくつか段階があります。その過程を追う前に、ひっくり返った対象が具体的に何なのかを並べておきます。

② 中身を分解すると 🔍

ロー・ファイと呼ばれる音には、だいたいこういうものが混ざっています。全部もとは直すべき問題でした。

🔹 ヴァイナルのクラックル — レコード盤の表面のホコリや傷が針に当たって出るパチパチ音

🔹 テープヒス — 磁気テープそのものが出すサーという底ノイズ。ダビングを重ねるほど大きくなります

🔹 ワウ・フラッター — テープやターンテーブルの回転がわずかに一定でないせいでピッチが揺れること

🔹 狭くなった帯域 — 高域と低域が削られて中域だけ残った状態。ラジオや古いスピーカーみたいな、こもった音になります

🔹 ビット低減と低サンプルレート — こちらはデジタル側の話。情報量を減らすと音が粗くなって縁が汚くなります

🔹 軽いクリッピングとサチュレーション — 信号を強く突っ込んだときに出る歪み

🔹 崩れたタイミング — 拍がぴったり合っていないこと。これは機材ではなく演奏の問題ですが、ロー・ファイではむしろ核心です

並べてみると全部欠陥です。ところが、これを集めた音楽を人は何時間も流しっぱなしにしている。

③ 欠点なのに、なぜ心地よいのか 🧠

いくつかの理由が重なっています。

🔹 慣れた音だから — カセット、ラジオ、古いレコードは多くの人にとって子どもの頃の音です。直接経験していない世代にも、映画やゲームを通して「昔」の記号として学習されています

🔹 人が触った印だから — 完璧に揃った音は機械が作ったように聞こえます。揺れていて汚い音には、誰かが手を入れた痕跡が残る

🔹 注意を引かないから — 実用面ではこれがいちばん大きい。高域が刺さってダイナミクスの大きい音楽は、しょっちゅう耳を持っていかれます。逆に高域が抑えられて音量が平らな音楽は背景に流れていく。勉強や仕事をしながら流すのに向いている理由です

🔹 耳が疲れにくいから — 高域が減ると長時間聴いても疲れが少ない。何時間も流しておく用途と噛み合います

📌 まとめると

ロー・ファイは「低品質」ではなく、注意を引かない方向に整えた品質です。目的が違うんですね。

④ 日本には先に「作業用BGM」があった 🇯🇵

ここで日本の事情をひとつ挟みます。

海外でロー・ファイの24時間配信が定着したのは2010年代後半ですが、日本にはそれより前から「作業用BGM」というカテゴリがありました。2000年代後半にはニコニコ動画でタグとして定着していて、長尺の音楽動画を流しっぱなしにする文化が先にできていたわけです。

面白いのは、この二つが同じ発想にたどり着いていることです。曲を一曲ずつ選んで聴くのではなく、作業という状況に合う音をまとめて流しておく。主役は音楽ではなく、その時間のほうにある。

もうひとつ、日本の宅録文化もここに絡みます。1980年代のインディーズはカセットテープでの自主制作が中心で、音質は当然良くありませんでした。ただその「良くなさ」が、メジャーの音との距離感そのものとして受け取られていた面もあります。ロー・ファイが単なる劣化ではなく態度として読まれる土壌は、わりと昔からあったわけですね。

聴く側の土壌の話はここまでにして、作る側に戻ります。欠点を欠点でない使い方で鳴らした人が先にいました。

⑤ ズレをグルーヴに変えた人 🥁

外せない名前が J Dilla です。

彼についていちばんよく語られるのがクオンタイズを使わなかったこと。サンプラーでドラムを叩くとき、グリッドに合わせて整えず、手で叩いたままにしていた。だからキックとスネアとハイハットが微妙にズレます。人はこれを「酔っぱらったドラム」と呼びました。

大事なのは、これが失敗ではなかったという点です。ズレる方向と量を制御していた。ハイハットは前へ、スネアは後ろへ、という具合に一定のクセがあります。そのズレが曲全体を押したり引いたりする感じを作る。

そこに古いジャズやソウルのレコードをサンプルとして使いながら、盤のノイズを消さなかった。 ピッチを下げて使えばノイズも一緒に下がって、より太くなります。この組み合わせが、のちにロー・ファイ・ヒップホップと呼ばれるものの原型になりました。

▶ J Dilla — Last Donut of the Night

2006年のアルバム「Donuts」に入っている曲です。このアルバムは彼が病床で作業し、亡くなる直前に出ました。

Dillaがリズムの側から扉を開けたとすれば、いま僕らが思い浮かべるロー・ファイの空気はもう一本の軸から来ています。

⑥ もう一本の軸は日本から 🎌

その軸が Nujabes です。

Dillaの影響を受けながら、方向は少し違いました。ジャズピアノや弦のサンプルを多く使い、音がもっとやわらかくて叙情的です。ヒップホップの荒い面より、雰囲気を優先した側ですね。

この人が決定的だったのは音楽だけでなく文脈のせいでもあります。彼の音楽がアニメーション作品と結びついたことで、ロー・ファイ特有の視覚イメージ — 窓辺で何かをしている人物、雨、夜の街 — が一緒に定着しました。いまのロー・ファイ系チャンネルのサムネイルがだいたいあの系統なのは偶然ではありません。

日本から出たものが海外で「ロー・ファイ」という名前でまとめ直されて、また日本に戻ってきた。そういう往復があった分野でもあります。

Nujabesは2010年に亡くなりました。

▶ Nujabes — Feather

⑦ 24時間配信がジャンルを固めた 📺

ここまでは「こういう音楽を作る人たちがいる」という段階でした。ひとつのジャンルとして固まるのはYouTubeのおかげです。

2013年にYouTubeがライブ配信を開放したことで、24時間音楽を流し続けるチャンネルが生まれはじめます。そして2015年から2017年ごろにかけて、ロー・ファイのビートを24時間流してアニメ調の映像を貼っておくチャンネルが定着しました。いまは Lofi Girl という名前で知られているチャンネルが代表格です。

この形式が効いた理由があります。

🔹 終わりがないので選ばなくていい — 曲を選ぶ行為そのものが邪魔なので。流して忘れればいい

🔹 画面が止まっていない — ループするアニメーションが背景で動いていて、空間の感じが出ます

🔹 集まって聴いている感じがある — ライブチャットに「試験まであと3日」みたいなことが書かれる。ひとりでやる作業を一緒にやっている気分になれます

音楽ではなく状況を売ったわけです。そしてその状況に合う音が、ちょうどロー・ファイでした。

▶ Lofi Girl — 1 A.M Study Session

⑧ ところがそのノイズ、本物ではありません 🤖

ここで話が一周します。

いまのロー・ファイのトラックに入っているクラックルは、ほとんどが実際のレコードから来たものではありません。 プラグインやサンプルであとから足したものです。テープの揺れも同じ。本物のカセットに録り直しているわけではなく、そう聞こえるように計算して作っています。

つまりいまのロー・ファイは欠点を精密に再現したものです。ノイズの量をdB単位で調整し、どの帯域をどれだけ削るか決め、ピッチの揺れの速さと深さを数値で合わせる。完全に制御された不完全さですね。

これを偽物だと責める話ではないと思っています。音楽で大事なのはどう聞こえるかであって、どういう経路で作られたかではないので。ただ意図的な選択だと分かって使うことと、分からないままプリセットを乗せるのとでは結果が変わります。

その差が実際どこで出るのかを、作業の順番に置き換えるとこうなります。

⑨ 自分の曲に使うとき ✅

1. まずノイズなしで曲を完成させます。 ノイズで覆うとアレンジの穴が見えません。あとで外したときに物足りないなら、そのノイズが曲を支えていた証拠です
2. クラックルは思っているより小さく。 オン・オフして「あったっけ?」くらいがだいたい適量。気づくほど出ていたらもう過剰です
3. 高域は削るが、全部は削らない。 12〜15kHzより上をなだらかに落とすところから。8kHzから切ると、ただこもるだけになります
4. ピッチの揺れはごく浅く。 深く掛けると壊れた音になります。あるかどうか分からない程度がちょうどいい
5. タイミングは手で前後に振る。 プリセットのスウィングだけだと、いかにも打ち込みのスウィングになります。ハイハットは少し前、スネアは少し後ろ、とパートごとに方向を決めて動かしてみてください
6. 最後に全体をモノラルで聴きます。 ノイズ系はステレオに広く配置されていることが多く、モノラルにまとめると急に大きくなることがあります

まとめ

最初に「妙だ」と書いたあのジリジリしたノイズは、結局基準がひっくり返った場所に残っているものです。消すべきものとして分類されていた音が、その音が作る状態のほうを理由にして選び直された。

ここから持ち帰るものがあるとすれば、これだと思います。きれいな音が常に良い音とはかぎらないということ。曲がどんな状態を作るべきかが先にあって、その状態に必要なら汚いほうが正解でもあるということ。

#DTM #音楽制作 #宅録 #DTMerと繋がりたい #ローファイ #ビートメイキング #サンプリング #ヒップホップ #音楽史 #作業用BGM

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