2026年7月31日金曜日

一円も使わず作曲! — 2026 無料プラグイン総まとめ(プロもリリース曲に使っています)

 「結局、良い音は高いプラグインから生まれる」— 初心者が一番よくする誤解です。でも今は、無料プラグインだけで正式リリース曲を作るプロも本当に多い。本当の問題は別にあって、無料が多すぎて何を入れればいいか分からない、という点です。そこで、いま海外のプロデューサーが最もよく勧めているものだけをカテゴリ別に整理しました。

💡 今日の要点3行まとめ
・カテゴリごとに、有料に負けない無料が確かに存在します。
・3つだけ選ぶなら Vital・Valhalla Supermassive・TDR Nova
・ただし必ず公式サイトからだけ入手を。クラックや再配布版はマルウェアの危険が大きいです。

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シンセ — Vital, Surge XT

まずはVitalから入れればOK。無料ウェーブテーブルシンセの事実上の正解です。有料の代名詞Serumと画面構成も音質もよく似ていて、トラップ・EDM・ポップで使うベースやリードならこれ一つでほぼ作れます。もっと実験的な音が欲しいならオープンソースのSurge XTを合わせると良いです。(公式: vital.audio / surge-synthesizer.github.io)

Vital

画像出典: Vital 公式(vital.audio)・紹介目的の引用

EQ — TDR Nova

TDR Novaは、特定の帯域が耳障りに飛び出したときにその部分だけ抑える「ダイナミックEQ」機能まで無料で備えています。有料標準のFabFilter Pro-Qに最も近い無料代替とされ、大抵のミキシングはこれで十分です。(公式: Tokyo Dawn Records, tokyodawn.net)

TDR Nova

画像出典: Tokyo Dawn Records 公式(tokyodawn.net)

リバーブ・ディレイ — Valhalla Supermassive, TAL-Reverb-4

Valhalla Supermassiveは、控えめなディレイから果てしなく広がるアンビエント空間まで作れる、無料リバーブ・ディレイの伝説的な存在。実際のリリース曲でもよく使われます。ボーカルやシンセに軽く乗せる綺麗なプレートリバーブとしてTAL-Reverb-4を一つ加えれば空間系は完成。扱いも簡単です。(公式: valhalladsp.com / tal-software.com)

Valhalla Supermassive

画像出典: ValhallaDSP 公式(valhalladsp.com)

コンプレッサー — OTT, Analog Obsession

OTTはいわゆる「FLサウンド」の象徴であるマルチバンドコンプレッサー。シンセやドラムに掛けると音がぐっと明瞭になります。ただし強く掛けるほど副作用も大きいので、量の調整が肝心です。Analog Obsessionシリーズは1176などヴィンテージハードの色を無料で真似て、平坦な音に気持ちいいアナログ感を足してくれます。(公式: Xfer Records / analogobsession)

Xfer Records OTT

画像出典: Xfer Records OTT (Bedroom Producers Blog)・紹介目的の引用

サチュレーション — Chow Tape Model

サチュレーションは音に倍音(ハーモニクス)を加えて、より温かく太くするエフェクターです。Chow Tape Modelはアナログテープ特有の質感をかなり精密に再現し、綺麗すぎて冷たく聞こえるデジタルの音を一段と自然になじませてくれます。(公式: ChowDSP, chowdsp.com)

Chow Tape Model

画像出典: ChowDSP 公式(GitHub, chowdsp.com)

楽器・メーター — Spitfire LABS, Voxengo SPAN

Spitfire LABSはピアノ・弦・合唱など実際に録音した楽器を無料で出し続けています。有料ライブラリと同じエンジンなので音質もかなり良い。最後にVoxengo SPANは自分の音の周波数分布を目で見せてくれる無料アナライザーで、「低音が多すぎ?」と耳だけで迷う判断を助けてくれます。(公式: labs.spitfireaudio.com / voxengo.com)

Spitfire Audio LABS

画像出典: Spitfire Audio LABS (Bedroom Producers Blog)・紹介目的の引用

Voxengo SPAN

画像出典: Voxengo SPAN 公式(voxengo.com)

では有料はなぜ買う?

無料だからといって音そのものが劣るわけではありません。ただ有料はすぐ使える完成度の高いプリセットがたくさん入っていて、アップデートやサポートが続き、複数の機能が一画面に滑らかにまとまっていて作業が速い。つまり結果の限界というより「時間と手軽さ」を買う感覚です。だからまずは上の無料で十分に力をつけて、同じところで繰り返し物足りなさを感じたとき、そのカテゴリの有料を一つずつ導入すればいいでしょう。

※ 入手する前に必ず
・必ずメーカー公式サイトからだけダウンロードを。検索上位の「無料ダウンロード」再配布サイトはマルウェア混入が多いです。
・自分のDAWの規格(VST3・AUなど)とOS(Windows・Mac)に合うか確認して入手を。

💡 一行まとめ
良い曲が作れないのはプラグインが足りないからではありません。上の無料をきちんと使うだけで十分です。

あなたが愛用している無料プラグインは何ですか?コメントで教えてください。次回は人気の有料プラグインも一つずつ掘り下げる予定なので、読者登録しておくと見逃しません。

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3年で製造終了した「失敗作」が、なぜヒップホップの心臓になったのか — ローランド TR-808

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トラップ、J-POP、ハウス、どのジャンルを流しても床を長く揺らすあの低音。プロデューサーが「808を敷いた」と言うとき、その808が今日の主役です。ところがこの伝説的なマシン、実は発売からわずか3年で製造終了した商業的失敗作でした。誰も欲しがらなかった機械が、どうやって現代音楽の骨格になったのか。その逆転劇をたどります。

💡 今日の要点3行まとめ
1. TR-808は1980年発売、本物のドラムではなくアナログ合成で音を作るドラムマシン
2. 「音が偽物っぽい」と3年で製造終了。だが中古で安く出回り、ヒップホップやハウスが発見
3. 今では史上最も多くのヒット曲に使われたドラムマシンになった


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失敗作として生まれた

1980年、ローランド創業社長の梯郁太郎(かけはし いくたろう)は、技術部長の菊本忠男(きくもと ただお)に新しいリズムマシンを託します。きっかけは「1000ドル以内でリアルなドラムマシンを作れれば必ず売れる」という号令でした。正式名称は「TR-808 リズムコンポーザー」。ユーザー自身がリズムを打ち込み、チューニング・ディケイ(音が消えるまでの時間)・音量まで調整できる、当時としては先進的な発想でした。

問題は音でした。競合製品が本物のドラム録音を再生してリアルな音を出すなか、808の音は「ティーン」と鳴る人工的な音色だったのです。多くの人がこれをおもちゃのようだと感じました。

「偽物の音」の秘密 — サンプルではなく合成

808が特別なのは音の作り方です。同時期に高価だったリン(Linn) LM-1は、本物のドラム録音、つまりサンプルをチップに保存して再生していました。本物に近いものの、メモリが高価で価格も高くなりました。

一方808は、オシレーター・フィルター・エンベロープという回路で各打楽器の音をその場で合成しました。初期には規格に満たない「不良トランジスタ」のノイズまで独特の質感として取り込んだのです。この方式のおかげで低音(バスドラム)を自在にチューニングして長く伸ばせるようになり、その結果、床を深く揺らす「ブーン」という低音が誕生しました。今わたしたちが「808ベース」と呼ぶ、まさにあの音です。

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製造終了、そして予想外の逆転

808に使われていた不良トランジスタが、生産技術の進歩でもう作られなくなると、ローランドは約12,000台だけ製造して1983年に製造終了します。ところが、ここから逆転が始まります。売れずに中古市場へ安値で流れた808を、お金のない若いヒップホップ・ハウス・テクノのミュージシャンたちが買い始めたのです。値段が安く、誰でも一人でリズムを組めるという点が、むしろ武器になりました。

3曲で聴く808の歴史

🔹 ① マーヴィン・ゲイ — Sexual Healing (1982)

808を前面に押し出して世界的ヒットを記録した最初の曲。「この機械は不良品ではない」とプロデューサーたちに証明した、808にとって最高の広告でした。



🔹 ② アフリカ・バンバータ & ソウルソニック・フォース — Planet Rock (1982)

プロデューサーのアーサー・ベイカーが808で作った最初のエレクトロ・トラック。ヒップホップ最初の黄金期を切り開いた、最も影響力のあるレコードの一枚に数えられます。



🔹 ③ カニエ・ウェスト — Heartless (2008)

アルバム名そのものが「808s & Heartbreak」。808サウンドを情感豊かに再解釈し、以降のトラップと現代ポップの方向を変えました。




今も生きている808

本物の808実機は今や数十万円を超える収集品になりましたが、その音は消えませんでした。ローランドが再現したハードウェア(TR-8Sなど)や数多くのソフト音源、そしてDAW標準の音源のなかで、808は毎日鳴り続けています。

とりわけ2010年代のアメリカ・アトランタで生まれたトラップが、808を再び流行の中心へ押し上げました。バスドラムの音程を曲のコードに合わせて滑らせるように変える「808スライド」が代表的で、これは808の低音を長く伸ばしチューニングできるという、まさにあの特性のおかげで可能になった技法です。トラップの長く滑る低音、J-POPやボカロ・同人音楽のタイトなキック — その源流をたどれば、1980年のこの「失敗作」にたどり着きます。

💡 一行まとめ
最も失敗した音が、最も愛される音になった — それがTR-808です。

あなたの一番好きな808トラックは何ですか?コメントで教えてください。音楽制作の話を続けていくので、読者登録しておくと次回もまたお会いできます。

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2026年7月30日木曜日

曲はできたけど、どうやってリリースするの?音楽配信のすべて(国内・海外ディストリビューター比較)

11回にわたって、マイク選びからメロディの作り方まで来ました。ここで曲がひとつ完成したとしましょう。すると最後の質問が残ります。

「これ、どうやってSpotifyやLINE MUSICに載せるの?」

ここで大半の人が止まります。検索するとDistroKidがいいという記事がたくさん出てくるのに、実際に登録してみるとLINE MUSICにもレコチョクにも入りません。そしてなぜ入らないのか、誰も説明してくれません。

今日はその構造を整理します。これだけ分かっていれば無駄な出費をしなくて済みます。

💡 今日の3行まとめ
1. ディストリビューターを通さないと配信そのものができない
2. 海外サービスは国内ストアに届かない — DistroKidではLINE MUSICに入らない
3. 配信収益と著作権使用料は別の財布。JASRACへの登録は自分でやる必要がある

📋 目次
① なぜ自分で上げられないのか
② リリースまでの全体の流れ
③ 海外ディストリビューター — DistroKidの落とし穴
④ 国内ディストリビューター — TuneCore JapanとBIG UP!
⑤ どれを選べばいいのか
⑥ リリース日を逆算する
⑦ 著作権は別です — JASRACとNexTone
⑧ Q&A
⑨ 初リリース チェックリスト

① なぜ自分で上げられないのか 🚪


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YouTubeはアカウントさえ作ればすぐ上げられます。ところがSpotifyやLINE MUSICはそれができません。なぜでしょうか。

🔹 プラットフォームは個人に窓口を開けていません

音楽配信サービスは、個人のクリエイターに直接アップロードする窓口を用意していません。代わりにディストリビューター(配信代行)を通してのみ楽曲を受け取ります。

理由は大きく2つ。ひとつは著作権の問題で、その曲が本当にあなたのものか検証する窓口が必要だから。もうひとつは管理の問題で、世界中の個人クリエイターをプラットフォームが一人ずつ相手にするのは現実的に不可能だからです。

🔹 ディストリビューターがやること

ディストリビューターはクリエイターとプラットフォームの間に立つ仲介者です。こんな仕事をします。

・音源とデータを各ストアの規格に合わせて変換・納品
・楽曲の固有番号(ISRC)とアルバムの固有番号(UPC)を発行
・各ストアで発生した収益をまとめてクリエイターに支払い
・権利侵害やエラーが起きたときの対応

つまりディストリビューターと契約しないとリリース自体が不可能です。これが出発点になります。

📋 ここで出てくる2つの用語
ISRC — 楽曲ひとつひとつに付く国際標準コードです。人でいえばマイナンバーのようなもの。同じ曲が複数のストアに配信されても、この番号でひとつの曲だと識別されます。
UPC — アルバム単位に付くコードです。シングルもアルバム1枚として扱われるので、シングルにも付きます。
どちらもディストリビューターが自動で発行してくれます。自分で申請する必要はありません。

② リリースまでの全体の流れ 🗺️

順番を先に押さえておくと、あとが楽になります。

🔹 この順番です

1. 曲の完成(マスタリングまで終わったWAVファイル)
2. ジャケット画像の準備(正方形 3000×3000px 推奨)
3. ディストリビューターの選定と登録
4. 音源と情報のアップロード
5. 審査・確認の待機
6. リリース日に各ストアで公開
7. 著作権の登録(配信とは別。後述します)

🔹 準備するもの

音源: WAV 44.1kHz 16bit以上。MP3は基本的に受け付けられません
ジャケット: 正方形、3000×3000px、JPGまたはPNG
楽曲情報: 曲名、アーティスト名、作詞・作曲・編曲者、ジャンル、歌詞
リリース日: 最低でも数週間先に。後で詳しく

ジャケットにロゴやURL、SNSのIDを入れると差し戻されることが多いです。純粋に画像とタイトル程度に留めてください。

③ 海外ディストリビューター — DistroKidの落とし穴 🌍


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海外の情報を見ているといちばんよく出てくる名前です。

🔹 DistroKid

年24.99ドルから。この金額で何曲アップロードしても無制限です。収益は100%クリエイターに入ります。手数料を取らず月額・年額だけで運営する方式ですね。

数字だけ見ると圧倒的に安く見えます。実際、海外リスナー中心に活動するなら悪くない選択です。

🔹 ただし決定的な落とし穴があります

国内ストアに配信されません。 LINE MUSIC、レコチョク、mora、dヒッツといった日本のストアに入らないんです。Spotify・Apple Music・YouTube Musicといったグローバルなプラットフォームが中心になります。

DittoなどほかのUS系サービスも同じ傾向です。海外向けに特化していて、国内ストアは弱い。

日本国内でリスナーを増やしたいなら、この時点でDistroKidは候補から外れます。ここを知らずに登録して、あとで気づくパターンが本当に多いです。

④ 国内ディストリビューター — TuneCore JapanとBIG UP! 🇯🇵

ここからが日本で活動する人の本命です。そして日本は選択肢が恵まれているほうです。

🔹 TuneCore Japan

国内では実績・機能・サポートのどれを取っても現状いちばん強いサービスです。LINE MUSIC、レコチョク、mora、AWAといった国内ストアはもちろん、Spotify・Apple Musicなど海外にも同時に配信されます。国内と海外を1本でまかなえるのが最大の強みです。

料金は無制限プランが年4,400円から。以前はリリースごとに課金される仕組みだったので、この改定でコストパフォーマンスがかなり良くなりました。無料プランはありません。

🔹 BIG UP!

エイベックスが運営しているサービスで、無料プランがあります。 お金をかけずにまず1曲出してみたい人にとっては、これ以上ない入り口です。

国内ストアにも配信され、国内のプレイリスト施策にも乗りやすいと言われています。有料プランもあり、機能や収益還元率が変わります。

🔹 審査制のサービスもあります

FRIENDSHIP.のように、送った音源を聴いて受けるかどうかを決めるキュレーション型のサービスも存在します。通ればプロモーション面の後押しが付いてくるのが利点ですが、断られる可能性があります。実力に自信がついてから検討する選択肢として覚えておくといいでしょう。

📋 日本は恵まれています
韓国など近隣の国では、国内ストアに入るために審査のある代理店と契約するしかなく、手数料も20%前後かかるのが普通です。日本にはTuneCore Japanのように国内外を一括でカバーするサービスがあり、しかもBIG UP!のような無料の入り口まである。この環境は当たり前ではありません。

⑤ どれを選べばいいのか ✂️

読むのが面倒な方のためにまとめました。

🔹 「まず1曲、お金をかけずに出してみたい」

→ BIG UP!。無料プランで国内ストアまで届きます。最初の1曲の入り口として最適です。

🔹 「継続的にリリースしていく。国内も海外も取りたい」

→ TuneCore Japan。無制限プランなら出せば出すほど1曲あたりが安くなります。長く続けるなら結局ここに落ち着く人が多いです。

🔹 「海外リスナー狙い。国内ストアは要らない」

→ DistroKid。安くて無制限です。ただし本当に国内を捨てていいのか、一度考えてから決めてください。

🔹 「プロモーションの後押しがほしい」

→ FRIENDSHIP.のような審査制サービス。通ればという条件付きですが、載ったときの効果は違います。

📋 よくある誤解
「複数のディストリビューターに同時に預ければもっと広がるのでは?」
なりません。同じ曲を2社が同じストアに納品すると重複として弾かれ、両方に問題が起きます。1曲につき1社が原則です。

⑥ リリース日を逆算する 📅

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リリース日をいつにするかは、思っている以上に重要です。

🔹 アップロードした翌日には出ません

審査と各ストアへの反映に時間がかかります。目安はこうです。

・音源・ジャケットの完成: リリースの2ヶ月前には終わらせておく
Spotifyのプレイリスト申請: リリースの最低4週間前
・ディストリビューターへのアップロード: 最低2週間前

2つ目が特に重要です。Spotifyはリリース前の楽曲を事前に提出して初めてエディトリアルプレイリストの検討対象になります。リリース後に申請しても、その曲はもう機会を逃しています。

🔹 詰め込まないでください

日程をぎりぎりに組むと、誤字ひとつ直す時間もありません。曲名やアーティスト名が間違ったまま出てしまうと修正にまた時間がかかりますし、一度広まった情報は戻せません。

余裕を持って組んでください。1日2日遅れて出たところで誰も気づきません。

⑦ 著作権は別です — JASRACとNexTone ⚖️

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ここがいちばん分かりにくく、そして見落とすとお金を取り損ねる部分です。

🔹 配信収益と著作権使用料は別の財布です

曲が1回再生されると、お金はいくつかに分かれます。大きく2つだけ覚えてください。

原盤収益 — 録音物そのものから生まれるお金。ディストリビューターを通して入ってきます。契約さえすれば自動で受け取れます。

著作権使用料 — 曲を書いた人に行くお金。これはディストリビューターが面倒を見てくれません。 別途、著作権管理事業者に登録する必要があります。

🔹 JASRACとNexTone、何が違うのか

日本には管理事業者が2つあります。契約の形からして違います。

JASRAC — 信託契約
契約期間中、著作権が自分から協会に移ります。だから無断利用があったとき、協会が著作権者として訴訟を起こせます。演奏権を含むすべての権利を管理していて、海外127の管理団体と提携があるので、国外で使われたときも回収できます。

ただし信託契約の申込金が必要です。著作者で27,000円(税込)ほど。インディーズには軽くない金額です。

NexTone — 委任契約(取次ぎ)
著作権は移転しません。登録費用は無料です。ただし演奏権の管理は限定的で、海外の管理団体との提携もJASRACほど広くありません。

そして個人では契約できません。 原則として法人、つまり音楽出版社が対象です。個人の作詞・作曲者が直接NexToneと契約することはできません。

🔹 つまり個人の場合は

選択肢は実質2つです。JASRACに信託するか、音楽出版社を通してNexToneと契約するか。自主制作で誰にも所属していないなら、事実上JASRAC一択になります。

🔹 登録しないとどうなりますか

著作権使用料が消えるわけではありませんが、あなたには来ません。分配されずに残ったぶんは、登録している他の権利者に再分配されます。100万回再生されても、登録していなければその取り分は受け取れません。

🔹 最初から登録すべきでしょうか

正直なところ、27,000円は最初の1曲を出す人にとって重い金額です。まず配信を始めて、再生数が実際に積み上がってきた段階で検討するのも現実的な判断だと思います。

ただし、放送やカラオケ、店舗BGMで使われる可能性が出てきたら話が変わります。そこは登録していないと本当に取り損ねる領域なので、そのときは迷わず動いてください。

📋 順番の整理
ディストリビューター契約 → 配信リリース → 著作権管理事業者への登録。この3つは別々の手続きです。ひとつやったから他が自動で済むわけではありません。

⑧ Q&A 💬

Q. ディストリビューターに預けると著作権を取られますか?

A. いいえ。配信の代行をするだけで、著作権はあなたのものです。ただし契約書に独占期間や解約条件が書かれているので、そこは必ず読んでください。特に解約後どのくらいで楽曲が取り下げられるかを確認しておくといいです。

Q. カバー曲もリリースできますか?

A. 原曲の権利者の許諾が必要です。日本の場合、JASRAC管理曲であれば配信のライセンス手続きが比較的整っていて、ディストリビューター側で対応してくれることもあります。ただし手続きは発生するので、初リリースをカバー曲にするのはおすすめしません。

Q. AIで作った曲も配信できますか?

A. サービスごとに方針が違い、しかも変わり続けています。完全なAI生成物を拒否するところが増えていますし、著作権登録はさらに厳しくなります。ツールとして一部使ったものと、全部生成したものは扱いが違うので、契約前に各サービスの規約を確認してください。

Q. アーティスト名は後から変えられますか?

A. できますが面倒です。すでにリリースした曲のアーティスト名を変えると、Spotifyのアーティストページが分かれたり統計が割れたりします。初リリース前に確定させてください。検索したときに同名のアーティストがいないかも先に確認しておくといいです。

Q. 収益はいつ入りますか?

A. だいたいリリースから2〜3ヶ月後以降です。ストアがディストリビューターに支払い、そこからクリエイターに支払われる段階を踏むためです。最初の月に何も入らなくても驚かないでください。

⑨ 初リリース チェックリスト ✍️

リリース前にこれだけ確認してください。

1. マスタリングまで終わったWAVファイルが用意できている
2. ジャケットが3000×3000の正方形で、ロゴやURLが入っていない
3. 曲名・アーティスト名のつづりを3回確認した
4. 作詞・作曲・編曲者を正確に記載した(共作なら取り分も合意した)
5. ディストリビューターを決め、国内ストアに入るか確認した
6. リリース日を最低4週間先に設定した
7. 著作権登録をどうするか方針を決めた

3番と4番を軽く見ないでください。リリース後に直すのは本当に手間です。

おわりに

今日の内容を一行に圧縮するとこうです。

「ディストリビューターなしにリリースはできない。DistroKidではLINE MUSICに入らない。そして著作権登録は配信とは別物。」

ここまでがマイクからリリースまでの基礎ひと回りです。次回からは一段深いところに入ります。最初のテーマは、キックとベースがお互いを食い合うときに使うサイドチェインコンプレッションです。気になることはコメントで教えてください。


メロディが浮かばないとき - 和音の上にメロディを乗せる4つの方法

前回で和音を4つ積んで8小節を作ったなら、あとはその上に乗せるものが残っています。メロディですね。

ところがここがいちばん途方に暮れます。コードにはルールがあって作れたのに、メロディは「浮かぶ」ものみたいに感じられますから。才能の問題に見えたりもします。

でも違います。メロディにも方法があります。今日はその方法を4つ、順番に扱います。1つ目だけ知っていれば、今日中に外れないメロディができます。

💡 今日の3行まとめ
1. その区間のコード構成音から選べば絶対に外れない
2. 強拍にコード音、弱拍に通り過ぎる音 — これがメロディの基本文法
3. 新しく作るより、2小節を繰り返すほうがずっと良く聞こえる

📋 目次
① メロディとはなんですか
② 方法1 — コード構成音から選ぶ
③ 方法2 — 通り過ぎる音を混ぜる
④ 方法3 — 階段とジャンプを混ぜる
⑤ 方法4 — 2小節を繰り返す
⑥ 初心者がよくやる3つのミス
⑦ Q&A
⑧ 今日やること

① メロディとはなんですか 🎤

簡単に整理すると、一度にひとつずつ続いていく音の線です。和音が複数の音を同時に積んだものなら、メロディは一本の線で流れていきます。

基準はひとつで十分です。人が歌えるかどうか。 カラオケでみんなが歌うあの線がメロディです。楽器で演奏する場合でもこの基準は有効です。

🔹 和音とメロディは互いを支えます

メロディだけだと寂しく、和音だけだと退屈です。両方あって初めて音楽になります。そして大事なのは、どんな和音が敷かれているかが、その上に乗せられる音を決めるという点です。

これが今日の出発点です。メロディは白紙から思いつくものではなく、下に敷かれた和音がすでに半分ほど決めてくれています。

② 方法1 — コード構成音から選ぶ 🎯


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いちばん簡単で、いちばん確実な方法です。これだけで今日メロディができます。

🔹 ルール

今敷かれているコードの構成音の中からだけ音を選んでください。

前回作った進行でやってみます。

・C区間(ド・ミ・ソ)→ この3音の中からだけ選ぶ
・G区間(ソ・シ・レ)→ この3音の中からだけ選ぶ
・Am区間(ラ・ド・ミ)→ この3音の中からだけ選ぶ
・F区間(ファ・ラ・ド)→ この3音の中からだけ選ぶ

順番とリズムは自由です。C区間でソ-ミ-ドと下がってもいいし、ド-ド-ソと繰り返してもいい。どう選んでも外れません。

🔹 なぜ絶対に外れないのか

メロディに使う音が、下の和音にすでに入っている音だからです。同じ音を上下に重ねているだけなので、ぶつかる理由がありません。

ここで和音に含まれる音をコード音(コードトーン)と呼びます。この先出てくる用語なので覚えておくと便利です。

🔹 ひとつのコツ

コードが変わる地点でメロディも一緒に動かしてやると、ずっと自然になります。コードはCからGに移ったのにメロディがずっと同じ音を握っていると、ぎこちなくなることがあります。もちろんわざとそうする技法もありますが、最初はコードが変わるときにメロディも変える側が安全です。

📋 ここで止まらないでください
この方法だけだと外れない代わりに退屈です。和音をただ解いただけのように聞こえて、「メロディ」という感じが弱い。だから次の段階が必要になります。

③ 方法2 — 通り過ぎる音を混ぜる 🌉


chordtone_vs_passing_ja.png


ここでメロディがメロディらしくなります。

🔹 コードにない音も使えます

C区間だからといってド・ミ・ソだけ使わなければならないわけではありません。レやファを使ってもいい。ただしどこに置くかが重要です。

🔹 強拍と弱拍

1小節を4拍で数えると、1拍目と3拍目が相対的に重く感じられます。これを強拍と呼びます。2拍目と4拍目は相対的に軽く、これを弱拍と言います。

拍をさらに細かく割ると、表が強拍、その間の裏が弱拍になります。難しく考えず「重く感じる場所」と「すり抜ける場所」と理解すれば十分です。

🔹 基本文法

強拍にはコード音 — 安定感を与える
弱拍にはコードにない音 — すり抜けながら動きを作る

C区間でド(強)-レ(弱)-ミ(強)と上がってみてください。レはCコードにない音ですが、弱拍ですり抜けるので全然ぎこちなくありません。むしろドからミへ直接飛ぶよりずっと滑らかです。

こうしてコード音の間をつなぎながら通り過ぎる音を経過音、英語ではパッシングノート(passing note)と呼びます。

🔹 逆にするとどうなるか

強拍にコードにない音を置くと緊張感が生まれます。これはミスではなく、ひとつの表現です。切ないバラードやジャズではわざとそうします。

ただ最初は基本文法を体に入れるのが先です。ルールを知って破るのと、知らずに破るのは結果が違います。

💡 まとめると
安定した音を柱として立て、その間を別の音でつなぐ。これがメロディの骨格です。

④ 方法3 — 階段とジャンプを混ぜる 🪜


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音の選び方が分かったら、次はその音たちがどうつながるかが残っています。

🔹 順次進行 — 階段を歩く

すぐ隣の音へ1マスずつ動くことです。ド-レ-ミ-ファのように。やわらかくて歌いやすい。人の声がいちばん楽に動く方式です。

🔹 跳躍 — ジャンプする

遠くへ飛ぶことです。ドからソへ一気に行くように。ドラマチックで印象的です。サビがパッと開ける感じは、たいていこの跳躍から生まれます。

🔹 混ぜる必要があります

階段だけだと退屈です。ずっと歩いているだけですから。逆にジャンプだけだと落ち着かず、歌うのも難しくなります。

比率で言うと階段が多くてジャンプは数回が自然です。ジャンプが貴重なほどインパクトが大きくなりますから。

🔹 最高音は1か所だけ

8小節の中でいちばん高い音が出る場所をひとつだけ決めておいてください。そこがその区間の頂点になります。

高い音をあちこちに撒くと、どこも頂点になりません。逆に1か所だけはっきり高ければ、聴く人の耳はその地点をクライマックスとして認識します。これは編曲を一切しなくても曲に起伏を作る方法です。

だいたい8小節のうち後半、5小節目か6小節目あたりに置くとよく馴染みます。もちろん曲によって違うので、動かしながら聴くのが正確です。

⑤ 方法4 — 2小節を繰り返す 🔄


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これが今日いちばん実用的な話かもしれません。

🔹 初心者がもっともよくやるミス

8小節を作るとき、8小節すべてを違うものにしようとすることです。すると2つのことが起きます。作りながら疲れ、完成しても記憶に残りません。

🔹 記憶に残るメロディは繰り返します

好きな曲のサビを思い出してみてください。おそらく短い断片が何度か繰り返されているはずです。人は繰り返しを通してメロディを記憶します。初めて聴く旋律を8小節ずっと追いかけるのは、思っているより大変なことです。

この短い繰り返し単位をモチーフ(motif)と呼びます。曲の種のようなものです。

🔹 実際の手順

1. 2小節のメロディをひとつ作る
2. それをそのままコピーして3・4小節目に貼る
3. 5・6小節目にも貼る
4. 最後の7・8小節目だけ違うものにする

こうすると8小節が完成しますが、実際に作ったのは2小節半です。それでも聴くとずっと完成度が高く聞こえます。

🔹 もう一歩

そのままコピーする代わりに少し変えると、さらに良くなります。

・2回目の繰り返しは最後の音だけ変える
・3回目の繰り返しは全体を1音高くする
・リズムはそのままで音の高さだけ変える

リズムをそのまま維持するのが核心です。リズムが同じだと人は「同じメロディ」として認識するので、音が変わっても統一感が保たれます。

⑥ 初心者がよくやる3つのミス ⚠️

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🔹 ミス1 — 休符がない

空白を残すのが不安で、音をずっと詰めてしまう場合です。でもメロディには息をする場所が必要です。歌は人が歌うもので、人は息をしなければなりませんから。

休符は空いているのではなく、次の音を準備する場所です。2小節ごとに半拍でも空けてみてください。急にメロディが整理されます。

特にモチーフの間に休符を入れると、繰り返しがずっとはっきり聞こえます。

🔹 ミス2 — 音域が広すぎる

ピアノロールではどこでもクリックできるので、とても低い音ととても高い音を全部使ってしまいます。でもそうやって作ると人が歌えません。

目安を挙げると1オクターブ半以内で収めてください。低いドからその上のソくらいまでです。その中で作れば大半の人が歌えて、楽器で演奏しても自然に聞こえます。

🔹 ミス3 — リズムが毎回同じ

音の高さばかり気にしていると、リズムが全部同じになることが多いです。4分音符だけずっと続くような。音がどれだけよく選ばれていても、リズムが単調だと退屈に聞こえます。

長く伸ばす音ひとつ、短くトントンと叩く音を2、3個混ぜてみてください。実はメロディの個性は音の高さよりリズムから多く生まれます。有名な曲のサビをリズムだけ手で叩いても当てられる場合が多いのが、その証拠です。

⑦ Q&A 💬

Q. メロディを先に作ってコードを付けてもいいですか?

A. いいです。実際にそうやって作業する人も多いです。ただ初心者にはコードを先に敷いてメロディを乗せる側がずっと簡単です。選べる音があらかじめ狭まっているので。白紙から始めるより負担が少ない。慣れてから順番を変えてみてください。

Q. 口で歌ったものを打ち込みたいのに音が見つかりません。

A. 口で歌いながらピアノロールの音をひとつずつ押して、合う音を探せばいいです。時間はかかりますが、これがいちばん良い訓練です。この過程を繰り返すと、後には頭の中の音がピアノロールのどの位置なのか感覚がつかめます。ちなみに最近は歌ったオーディオをMIDIに変換してくれる機能もありますが、精度がまだ安定しないので序盤は手で探すことをおすすめします。

Q. コードにない音を強拍に置いたら必ず間違いですか?

A. いいえ。緊張感を作る表現で、実際の曲によく出てきます。ただそれが意図された緊張なのか外れた音なのかは、結局聴いてみないと分かりません。ぎこちなく聞こえるなら半拍後ろにずらして弱拍に移してみてください。それだけで解決する場合が多いです。

Q. メロディがコードより低くてもいいですか?

A. いいです。ただメロディはいちばんよく聞こえるべき線です。和音の間に埋もれるとメロディとして認識されません。だから普通は和音より上に配置します。前回扱ったボイシングとつながる話です。和音を下に整理しておくと、メロディが上がる場所ができます。

⑧ 今日やること ✍️

前回作った8小節をそのまま開いて始めてください。

1. C区間でド・ミ・ソの中からだけ2小節のメロディを作る
2. その2小節を3〜6小節目にコピーして貼る
3. 7〜8小節目だけ違うものにする
4. コードにない音を弱拍にひとつずつ挟み込んでみる
5. 2小節ごとに半拍ずつ休符を入れる
6. 8小節のうちいちばん高い音を1か所だけ残す

4番から6番が核心です。ひとつずつ適用しながら前後を聴き比べてみてください。どの変化がどんな効果を出すのか耳で確かめるのが今日の目標です。

数値もルールも正解ではなく出発点です。最終的な判断は耳がします。

おわりに

今日の内容を一行に圧縮するとこうです。

「コード構成音を柱として立て、その間を通り過ぎる音でつなぎ、2小節を繰り返す。」

こうして10回にわたってマイクからメロディまで来ました。次回は作った曲をどう仕上げて世に出すのか、リリースと配信の話を扱います。気になることはコメントで教えてください。

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2026年7月29日水曜日

コードは知らなくてOK - 白鍵だけで和音を積む3ステップ(1つ飛ばし・メジャー・4つのコード)

前回でドラムを打ち込んだなら、次は和音です。ところがここで大半の人が止まります。「コードが分からないんですけど」

正直に言うと、コードの名前を知らなくても和音は積めます。わたしも最初はCが何かAmが何かも分からず、ただ響きのいい組み合わせを探して手探りしていました。それで作ったものが悪い音楽になったわけでもありません。

今日は理論の勉強なしで、今すぐピアノロールで和音を作る方法を扱います。ルールはひとつだけです。1つ飛ばし。

💡 今日の3行まとめ
1. 白鍵だけ使って1つ飛ばしで3つ積めば、それが和音
2. コードネームは「ルート+性格」の2ピース、構成音は1・3・5番目の音
3. 和音4つを回すだけで1曲の骨格ができる

📋 目次
① 和音とはなんですか
② ステップ1 — 白鍵で1つ飛ばし
③ 構成音とコードネームの読み方
④ ステップ2 — 明るくするか暗くするか
⑤ ステップ3 — 和音4つで曲を作る
⑥ 同じ和音なのに響きが違う理由
⑦ 日本の楽譜で見かける表記
⑧ DAWが助けてくれる機能
⑨ Q&A
⑩ 今日やること

① 和音とはなんですか 🎵

簡単です。2つ以上の音を同時に鳴らせば和音です。英語ではコード(chord)と呼びます。

メロディは音がひとつずつ順番に出てきますが、和音は複数の音が一緒に響きます。歌で声がメロディなら、その下に敷かれているピアノやギターが和音です。

🔹 なぜ3つ積むのか

2つ重ねても和音ですが、明るいか暗いかという性格がはっきり出ません。3つ積むと性格が確定して、それだけで曲を支えられるようになります。だから基本単位は3つです。この3音のかたまりをトライアド(triad)と呼びます。

もちろん4つ、5つも積みます。でもそれは3つに慣れたあとの話で、今日は3つだけ扱います。

② ステップ1 — 白鍵で1つ飛ばし ⌨️


chord_stack_skip_ja.png


ここが今日の核心です。これひとつ持ち帰ってもらえれば十分です。

🔹 ルール

1. 黒鍵はいっさい使いません。白鍵だけ
2. どれか白鍵をひとつ押します
3. すぐ隣の白鍵は飛ばします
4. その次の白鍵を押します
5. またひとつ飛ばして、その次を押します

これで3つ積めば和音になります。本当にこれだけです。

🔹 たとえば

ドから始めると — ド、(レを飛ばして)ミ、(ファを飛ばして)ソ。これがCコードです。

レから始めると — レ、(ミを飛ばして)ファ、(ソを飛ばして)ラ。これがDmコードです。

ラから始めると — ラ、(シを飛ばして)ド、(レを飛ばして)ミ。これがAmコードです。

名前は今は分からなくて大丈夫。大事なのは、どの白鍵から始めてもこの方法が通用するということです。

🔹 なぜ白鍵だけなのか

ピアノの白鍵7つ(ドレミファソラシ)は、互いによく馴染むように組まれた1セットです。このセットをスケール(scale)、日本語では音階と呼びます。白鍵だけ使えば同じセットの中で遊んでいることになるので、大きく外れた響きが出ません。

黒鍵を混ぜ始めるとずっと多彩な表現ができますが、同時に外れる危険も出てきます。だから最初は白鍵の中だけで遊んでも十分です。

📋 ひとつだけ注意
シ(B)から始めるものだけ響きが不安定です。シ・レ・ファの組み合わせで、緊張感が強くて初心者には扱いづらい。これは後で使い道があるので、今はシから始めるものだけ避けてください。

③ 構成音とコードネームの読み方 🔤


chord_tones_naming_ja.png


ここまで来れば和音は作れます。でも他人の譜面やYouTube講座を見るとCだのAmだのという記号が出てきますよね。それが何を指しているのか整理します。5分で済みます。

🔹 構成音とは

和音を成り立たせている音たちを構成音と呼びます。ド・ミ・ソという和音の構成音は、ド、ミ、ソの3つ。そのままの意味です。

🔹 なぜ1・3・5番目なのか

スケールの7つの音に順番に番号をつけてみてください。

・ド = 1
・レ = 2
・ミ = 3
・ファ = 4
・ソ = 5
・ラ = 6
・シ = 7

ここから1、3、5を取り出すとド・ミ・ソです。さきほどやった「1つ飛ばし」が、まさにこれをやる動作でした。ひとつ押してひとつ飛ばせば、自動的に1・3・5になります。

だから構成音3つをそれぞれこう呼びます。

🔹 ルート(根音)— 1番目の音

いちばん下に敷かれる音で、コードネームになる音です。ドがルートならそのコード名はC。ベースは普通この音を弾きます。

🔹 3rd — 3番目の音

真ん中の音です。明るいか暗いかを決める音。さきほど「真ん中の音」と呼んでいたのがこれです。この音ひとつが和音の性格を全部決めます。

🔹 5th — 5番目の音

いちばん上の音です。ルートを上から支える骨組みの役割をします。性格にはほとんど影響しないので、響きが窮屈なときに最初に抜いていい音でもあります。

🔹 音名とアルファベットの対応

コードネームはアルファベットで書きます。対応はこうです。

・ド = C
・レ = D
・ミ = E
・ファ = F
・ソ = G
・ラ = A
・シ = B

ドがCなのに、なぜAから始まらないのかと思われるでしょうが、昔のヨーロッパでラ(A)を基準音にしていた歴史が残っているだけです。理由は知らなくてよくて、対応だけ覚えれば十分。何度か使えば自然に染みつきます。

🔹 名前の読み方 — 2ピースです

コードネームはルート+性格でできています。

C → ルートがC(ド)、後ろに何もなければメジャー=明るい
Am → ルートがA(ラ)、mが付いているのでマイナー=暗い
F → ルートがF(ファ)、メジャー
Em → ルートがE(ミ)、マイナー

これで全部です。アルファベットを見てルートを割り出し、mが付いているかだけ見ればいい。

🔹 白鍵で作れるコード全部

1つ飛ばしで作れるのは7つで、これがその一覧です。

・C(ド・ミ・ソ)— メジャー
・Dm(レ・ファ・ラ)— マイナー
・Em(ミ・ソ・シ)— マイナー
・F(ファ・ラ・ド)— メジャー
・G(ソ・シ・レ)— メジャー
・Am(ラ・ド・ミ)— マイナー
・B°(シ・レ・ファ)— さきほど話した不安定なあれ

7つだけです。この一覧を手元に持っているだけで、たいていの曲は作れてしまいます。わざわざ覚えなくてもよくて、必要なときにこの記事を見返してください。

💡 あとで出会う記号
今は知らなくていいのですが、目に入るはずなので一行ずつ書いておきます。
7が付くと(C7、Cmaj7、Am7)4番目の音をもうひとつ積んだもの、susやaddが付くと構成音のひとつを変えたり足したもの、°やdimはさきほど見た不安定な和音です。3つが手に馴染んでから触れば十分です。

④ ステップ2 — 明るくするか暗くするか 🌗

major_minor_ja.png


1つ飛ばしで積んでみると、あるものは明るく、あるものは暗く聞こえます。偶然ではありません。

🔹 明るい和音 = メジャー

ド・ミ・ソのように明るく開けた感じの和音をメジャー(major)と呼びます。コードネームには何も付かないか、Mが付きます。C、F、Gといったものです。

🔹 暗い和音 = マイナー

ラ・ド・ミのようにひやりとした、悲しげな感じの和音をマイナー(minor)と呼びます。名前の後ろにmが付きます。Am、Dm、Emといったものです。

🔹 違いは3rdひとつだけです

ここが面白いところです。明るい和音と暗い和音の違いは、3rd(真ん中の音)が半音低いかどうかだけ。ルートと5thはそのままです。

ここで半音という言葉が出てきます。鍵盤で真隣のマス(白鍵でも黒鍵でも)にひとつ動くのが半音です。ドとド♯の間が半音で、ミとファの間も半音です。

・ド-ミ-ソ(明るい)→ 真ん中のミを半音下げてド-ミ♭-ソ → 暗くなる
・ラ-ド-ミ(暗い)→ 真ん中のドを半音上げてラ-ド♯-ミ → 明るくなる

実際にやってみれば、この文章を読むより百倍速く理解できます。和音をひとつ置いて、3rdだけ1マス上下にドラッグしてみてください。雰囲気がガラッと変わります。

これが大事なのは、曲の雰囲気を変えたいときに触る場所が明確になるからです。明るすぎて子どもっぽいと思えば3rdを下げてみて、暗すぎると思えば上げてみればいい。触る音がひとつに決まっているので迷いません。

⑤ ステップ3 — 和音4つで曲を作る 🔁


four_chords_ja.png


和音が作れるようになったら、あとは順番に並べれば曲になります。和音が続いていく順番をコード進行と呼びます。

🔹 まずはこの4つから

C(ド・ミ・ソ)→ G(ソ・シ・レ)→ Am(ラ・ド・ミ)→ F(ファ・ラ・ド)

それぞれ2小節ずつ、合計8小節を埋めて頭に戻ればいい。これひとつでもう曲の骨格が完成します。

括弧の中がそのコードの構成音です。全部白鍵で、全部1つ飛ばしで作ったもの。名前が分からなくても括弧だけ見てそのまま打ち込めます。

この進行が有名な理由があります。ポップス、バラード、J-POP、アニソンに山ほど使われてきました。それだけ安定して良く聞こえるということです。

🔹 順番を変えてもいい

同じ4つでも順番を変えるだけで雰囲気が変わります。構成音も一緒に書いておきます。

・Am(ラ・ド・ミ)→ F(ファ・ラ・ド)→ C(ド・ミ・ソ)→ G(ソ・シ・レ):少しひやりと始まる
・C(ド・ミ・ソ)→ Am(ラ・ド・ミ)→ F(ファ・ラ・ド)→ G(ソ・シ・レ):やわらかく流れる感じ
・F(ファ・ラ・ド)→ G(ソ・シ・レ)→ C(ド・ミ・ソ)→ Am(ラ・ド・ミ):押し出していく感じ

正解はありません。4つをあれこれ混ぜて、気に入った順番を選べばいい。それが作曲の始まりです。

💡 お気づきかもしれませんが
4つのコードの構成音が互いに重なっています。C(ド・ミ・ソ)とAm(ラ・ド・ミ)はドとミを共有し、F(ファ・ラ・ド)とAm(ラ・ド・ミ)はラとドを共有していますよね。こうして共通音が多い和音同士は、つないだときに滑らかに聞こえます。これがこの4つがよく馴染む理由です。

⑥ 同じ和音なのに響きが違う理由 🎚️

voicing_compare_ja.png


ここまでやると、こういう瞬間が来ます。「コードは合ってるはずなのに、なんで濁って聞こえるんだろう」

原因はたいてい配置です。同じ3音でも、どの高さにどう広げるかで響きが完全に変わります。この配置をボイシング(voicing)と呼びます。

🔹 低い場所で密集すると濁ります

低い音域で3音を近づけて置くと音が団子になります。人の耳は低音域で複数の音が近くにあると、それをうまく区別できないんです。だから泥のような響きになります。

🔹 解決は広げること

いちばん簡単な方法はルートだけ1オクターブ下げることです。

ド・ミ・ソをそのままにする代わりに、ルートのドだけをぐっと下に落として、3rdと5th(ミ・ソ)は上に残してください。下が広く抜けて上が整理され、ずっとすっきりします。

構成音3つはそのままです。音を変えたのではなく、高さだけ移動させただけ。

ここでオクターブという言葉が出てきますが、同じ名前の音が一段上や下に繰り返される間隔です。低いドと高いドが1オクターブ違い。同じ音のように聞こえますが高さが違います。

🔹 もう少し

・3音を広く開くと爽やかに聞こえます
・密に寄せると分厚く、密度のある響きになります
・ベースがすでに低音を担当しているなら、ピアノの和音はわざわざ低く行く必要がありません

これも正解があるわけではなく状況次第です。ただ「濁っている」と思ったとき最初に確認する場所がボイシングだということだけ覚えておいてください。

⑦ 日本の楽譜で見かける表記 🇯🇵

海外の解説をそのまま読むと出てこない、日本特有の表記が2つあります。混乱の元になりやすいので触れておきます。

🔹 ハニホヘトイロ

日本語の音名です。楽譜に「ハ長調」と書いてあったら、それはCメジャーのことです。対応はこうです。

・ド = ハ(C)
・レ = ニ(D)
・ミ = ホ(E)
・ファ = ヘ(F)
・ソ = ト(G)
・ラ = イ(A)
・シ = ロ(B)

つまり「ハ長調」=Cメジャー、「イ短調」=Aマイナー。今日作った白鍵だけの世界がまさにハ長調・イ短調です。DAWで作業する分には使わない表記ですが、市販の楽譜や音楽の授業では今も現役なので、対応だけ知っておくと困りません。

🔹 進行を数字で呼ぶ習慣

日本のDTM界隈では、コード進行を数字やニックネームで呼ぶことがよくあります。スケールの何番目のコードかを並べた表記です。

・4536進行(王道進行)— 切なく盛り上がる定番。J-POPで大量に使われています
・カノン進行 — パッヘルベルのカノンと同じ流れ
・小室進行 — 90年代の日本のダンスポップで多用された流れ

今日作ったC→G→Am→Fは数字で言えば1564です。数字表記は慣れると便利ですが、今の段階では「そういう呼び方があるんだな」程度で十分。まず耳で覚えるほうが先です。

⑧ DAWが助けてくれる機能 🛠️

最近のDAWにはこれを代わりにやってくれる機能がけっこうあります。使わないと損です。

🔹 スケールのハイライト

ピアノロールでキーを設定しておくと、そのスケールに属する音だけが明るく表示され、それ以外は暗くなります。明るいマスだけ打てば外れません。今日習った「白鍵だけ使う」をDAWが自動でやってくれるわけです。

🔹 スケール強制モード

そもそもスケールから外れた音を打てなくしたり、打ったら近い音に寄せてくれる機能です。初心者の段階でとても役に立ちます。

🔹 コードトラック・コードパッド

コードネームを入れるだけで和音を自動で作ってくれて、ボイシングまで整えてくれる機能です。Cubase、Logic、Abletonにどれも似たものがあります。

ただしこれを使うにしても、なぜその音が集まったのかは一度覗いてみることをおすすめします。ツールが作ってくれた結果を分解するのが、いちばん速い勉強です。

⑨ Q&A 💬

Q. 音楽理論をまったく学ばなくてもいいですか?

A. 始めるぶんには学ばなくて大丈夫です。今日の方法で曲は作れます。ただ続けていると「なぜこの組み合わせは良くて、あれは違和感があるのか」が気になる瞬間が来ます。そのときに学べば理解がずっと速い。音を先に体験してから理論を見ると説明が付く感覚で、順序が逆だと暗記になります。

Q. コードネームは覚えないといけませんか?

A. ひとりで作業するぶんには必要ありません。ただ誰かと共同作業したり譜面を見る機会が出てくると、共通語が必要になります。急ぐことではないので、自然に目に馴染むまで放っておいても構いません。

Q. 構成音の順番を変えても同じコードですか?

A. 同じコードです。ド・ミ・ソをミ・ソ・ドの順に積んでもCのままです。構成音3つが入っていれば順番と高さは関係ありません。ただしいちばん下に来る音が変わると印象が変わって、これを転回(インバージョン)と呼びます。今は知らなくていいですが「順番を変えてもコードはそのまま」だけ押さえておくと楽です。

Q. 和音はいくつまで積んでいいですか?

A. 3つから始めて4つ(7thコード)に進むと表現がずっと豊かになります。ただ多く積むほど濁る危険も増えます。数より配置が大事です。

Q. 白鍵だけだと全部似た響きになりませんか?

A. 最初はそう感じるかもしれません。でも同じ和音でも順番、リズム、ボイシング、楽器を変えればまったく別の曲になります。実際、世の中のヒット曲の相当数が同じ和音をいくつか回し使いしています。差は和音ではなく、その上に何を乗せるかで生まれます。

⑩ 今日やること ✍️

読んで終わりだと何も残りません。これだけやってみてください。

1. ピアノ音源をひとつ立ち上げる
2. 下の4つの和音を括弧のまま打ち込む
3. それぞれ2小節ずつ、8小節を埋める
4. ルートだけ1オクターブ下げてみて、下げる前と聴き比べる
5. 和音をひとつ選んで3rdを半音上げるか下げてみる

打ち込む和音はこれです。

・C = ド・ミ・ソ
・G = ソ・シ・レ
・Am = ラ・ド・ミ
・F = ファ・ラ・ド

4番と5番が肝です。耳で違いを確かめた瞬間、ボイシングとメジャー・マイナーが何なのか説明なしで腑に落ちます。

数値もルールも正解ではなく出発点です。最終的な判断は耳がします。

おわりに

今日の内容を一行に圧縮するとこうです。

「白鍵から1・3・5番目の音を選んで積めば和音、名前はルートのアルファベットに性格を足しただけ。」

次回はこの和音の上にメロディを乗せる方法を扱います。気になることはコメントで教えてください。

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