前回でドラムを打ち込んだなら、次は和音です。ところがここで大半の人が止まります。「コードが分からないんですけど」
正直に言うと、コードの名前を知らなくても和音は積めます。わたしも最初はCが何かAmが何かも分からず、ただ響きのいい組み合わせを探して手探りしていました。それで作ったものが悪い音楽になったわけでもありません。
今日は理論の勉強なしで、今すぐピアノロールで和音を作る方法を扱います。ルールはひとつだけです。1つ飛ばし。
💡 今日の3行まとめ
1. 白鍵だけ使って1つ飛ばしで3つ積めば、それが和音
2. コードネームは「ルート+性格」の2ピース、構成音は1・3・5番目の音
3. 和音4つを回すだけで1曲の骨格ができる
📋 目次
① 和音とはなんですか
② ステップ1 — 白鍵で1つ飛ばし
③ 構成音とコードネームの読み方
④ ステップ2 — 明るくするか暗くするか
⑤ ステップ3 — 和音4つで曲を作る
⑥ 同じ和音なのに響きが違う理由
⑦ 日本の楽譜で見かける表記
⑧ DAWが助けてくれる機能
⑨ Q&A
⑩ 今日やること
① 和音とはなんですか 🎵
簡単です。2つ以上の音を同時に鳴らせば和音です。英語ではコード(chord)と呼びます。
メロディは音がひとつずつ順番に出てきますが、和音は複数の音が一緒に響きます。歌で声がメロディなら、その下に敷かれているピアノやギターが和音です。
🔹 なぜ3つ積むのか
2つ重ねても和音ですが、明るいか暗いかという性格がはっきり出ません。3つ積むと性格が確定して、それだけで曲を支えられるようになります。だから基本単位は3つです。この3音のかたまりをトライアド(triad)と呼びます。
もちろん4つ、5つも積みます。でもそれは3つに慣れたあとの話で、今日は3つだけ扱います。
② ステップ1 — 白鍵で1つ飛ばし ⌨️
ここが今日の核心です。これひとつ持ち帰ってもらえれば十分です。
🔹 ルール
1. 黒鍵はいっさい使いません。白鍵だけ
2. どれか白鍵をひとつ押します
3. すぐ隣の白鍵は飛ばします
4. その次の白鍵を押します
5. またひとつ飛ばして、その次を押します
これで3つ積めば和音になります。本当にこれだけです。
🔹 たとえば
ドから始めると — ド、(レを飛ばして)ミ、(ファを飛ばして)ソ。これがCコードです。
レから始めると — レ、(ミを飛ばして)ファ、(ソを飛ばして)ラ。これがDmコードです。
ラから始めると — ラ、(シを飛ばして)ド、(レを飛ばして)ミ。これがAmコードです。
名前は今は分からなくて大丈夫。大事なのは、どの白鍵から始めてもこの方法が通用するということです。
🔹 なぜ白鍵だけなのか
ピアノの白鍵7つ(ドレミファソラシ)は、互いによく馴染むように組まれた1セットです。このセットをスケール(scale)、日本語では音階と呼びます。白鍵だけ使えば同じセットの中で遊んでいることになるので、大きく外れた響きが出ません。
黒鍵を混ぜ始めるとずっと多彩な表現ができますが、同時に外れる危険も出てきます。だから最初は白鍵の中だけで遊んでも十分です。
📋 ひとつだけ注意
シ(B)から始めるものだけ響きが不安定です。シ・レ・ファの組み合わせで、緊張感が強くて初心者には扱いづらい。これは後で使い道があるので、今はシから始めるものだけ避けてください。
③ 構成音とコードネームの読み方 🔤
ここまで来れば和音は作れます。でも他人の譜面やYouTube講座を見るとCだのAmだのという記号が出てきますよね。それが何を指しているのか整理します。5分で済みます。
🔹 構成音とは
和音を成り立たせている音たちを構成音と呼びます。ド・ミ・ソという和音の構成音は、ド、ミ、ソの3つ。そのままの意味です。
🔹 なぜ1・3・5番目なのか
スケールの7つの音に順番に番号をつけてみてください。
・ド = 1
・レ = 2
・ミ = 3
・ファ = 4
・ソ = 5
・ラ = 6
・シ = 7
ここから1、3、5を取り出すとド・ミ・ソです。さきほどやった「1つ飛ばし」が、まさにこれをやる動作でした。ひとつ押してひとつ飛ばせば、自動的に1・3・5になります。
だから構成音3つをそれぞれこう呼びます。
🔹 ルート(根音)— 1番目の音
いちばん下に敷かれる音で、コードネームになる音です。ドがルートならそのコード名はC。ベースは普通この音を弾きます。
🔹 3rd — 3番目の音
真ん中の音です。明るいか暗いかを決める音。さきほど「真ん中の音」と呼んでいたのがこれです。この音ひとつが和音の性格を全部決めます。
🔹 5th — 5番目の音
いちばん上の音です。ルートを上から支える骨組みの役割をします。性格にはほとんど影響しないので、響きが窮屈なときに最初に抜いていい音でもあります。
🔹 音名とアルファベットの対応
コードネームはアルファベットで書きます。対応はこうです。
・ド = C
・レ = D
・ミ = E
・ファ = F
・ソ = G
・ラ = A
・シ = B
ドがCなのに、なぜAから始まらないのかと思われるでしょうが、昔のヨーロッパでラ(A)を基準音にしていた歴史が残っているだけです。理由は知らなくてよくて、対応だけ覚えれば十分。何度か使えば自然に染みつきます。
🔹 名前の読み方 — 2ピースです
コードネームはルート+性格でできています。
・C → ルートがC(ド)、後ろに何もなければメジャー=明るい
・Am → ルートがA(ラ)、mが付いているのでマイナー=暗い
・F → ルートがF(ファ)、メジャー
・Em → ルートがE(ミ)、マイナー
これで全部です。アルファベットを見てルートを割り出し、mが付いているかだけ見ればいい。
🔹 白鍵で作れるコード全部
1つ飛ばしで作れるのは7つで、これがその一覧です。
・C(ド・ミ・ソ)— メジャー
・Dm(レ・ファ・ラ)— マイナー
・Em(ミ・ソ・シ)— マイナー
・F(ファ・ラ・ド)— メジャー
・G(ソ・シ・レ)— メジャー
・Am(ラ・ド・ミ)— マイナー
・B°(シ・レ・ファ)— さきほど話した不安定なあれ
7つだけです。この一覧を手元に持っているだけで、たいていの曲は作れてしまいます。わざわざ覚えなくてもよくて、必要なときにこの記事を見返してください。
💡 あとで出会う記号
今は知らなくていいのですが、目に入るはずなので一行ずつ書いておきます。
7が付くと(C7、Cmaj7、Am7)4番目の音をもうひとつ積んだもの、susやaddが付くと構成音のひとつを変えたり足したもの、°やdimはさきほど見た不安定な和音です。3つが手に馴染んでから触れば十分です。
④ ステップ2 — 明るくするか暗くするか 🌗
1つ飛ばしで積んでみると、あるものは明るく、あるものは暗く聞こえます。偶然ではありません。
🔹 明るい和音 = メジャー
ド・ミ・ソのように明るく開けた感じの和音をメジャー(major)と呼びます。コードネームには何も付かないか、Mが付きます。C、F、Gといったものです。
🔹 暗い和音 = マイナー
ラ・ド・ミのようにひやりとした、悲しげな感じの和音をマイナー(minor)と呼びます。名前の後ろにmが付きます。Am、Dm、Emといったものです。
🔹 違いは3rdひとつだけです
ここが面白いところです。明るい和音と暗い和音の違いは、3rd(真ん中の音)が半音低いかどうかだけ。ルートと5thはそのままです。
ここで半音という言葉が出てきます。鍵盤で真隣のマス(白鍵でも黒鍵でも)にひとつ動くのが半音です。ドとド♯の間が半音で、ミとファの間も半音です。
・ド-ミ-ソ(明るい)→ 真ん中のミを半音下げてド-ミ♭-ソ → 暗くなる
・ラ-ド-ミ(暗い)→ 真ん中のドを半音上げてラ-ド♯-ミ → 明るくなる
実際にやってみれば、この文章を読むより百倍速く理解できます。和音をひとつ置いて、3rdだけ1マス上下にドラッグしてみてください。雰囲気がガラッと変わります。
これが大事なのは、曲の雰囲気を変えたいときに触る場所が明確になるからです。明るすぎて子どもっぽいと思えば3rdを下げてみて、暗すぎると思えば上げてみればいい。触る音がひとつに決まっているので迷いません。
⑤ ステップ3 — 和音4つで曲を作る 🔁
和音が作れるようになったら、あとは順番に並べれば曲になります。和音が続いていく順番をコード進行と呼びます。
🔹 まずはこの4つから
C(ド・ミ・ソ)→ G(ソ・シ・レ)→ Am(ラ・ド・ミ)→ F(ファ・ラ・ド)
それぞれ2小節ずつ、合計8小節を埋めて頭に戻ればいい。これひとつでもう曲の骨格が完成します。
括弧の中がそのコードの構成音です。全部白鍵で、全部1つ飛ばしで作ったもの。名前が分からなくても括弧だけ見てそのまま打ち込めます。
この進行が有名な理由があります。ポップス、バラード、J-POP、アニソンに山ほど使われてきました。それだけ安定して良く聞こえるということです。
🔹 順番を変えてもいい
同じ4つでも順番を変えるだけで雰囲気が変わります。構成音も一緒に書いておきます。
・Am(ラ・ド・ミ)→ F(ファ・ラ・ド)→ C(ド・ミ・ソ)→ G(ソ・シ・レ):少しひやりと始まる
・C(ド・ミ・ソ)→ Am(ラ・ド・ミ)→ F(ファ・ラ・ド)→ G(ソ・シ・レ):やわらかく流れる感じ
・F(ファ・ラ・ド)→ G(ソ・シ・レ)→ C(ド・ミ・ソ)→ Am(ラ・ド・ミ):押し出していく感じ
正解はありません。4つをあれこれ混ぜて、気に入った順番を選べばいい。それが作曲の始まりです。
💡 お気づきかもしれませんが
4つのコードの構成音が互いに重なっています。C(ド・ミ・ソ)とAm(ラ・ド・ミ)はドとミを共有し、F(ファ・ラ・ド)とAm(ラ・ド・ミ)はラとドを共有していますよね。こうして共通音が多い和音同士は、つないだときに滑らかに聞こえます。これがこの4つがよく馴染む理由です。
⑥ 同じ和音なのに響きが違う理由 🎚️

ここまでやると、こういう瞬間が来ます。「コードは合ってるはずなのに、なんで濁って聞こえるんだろう」
原因はたいてい配置です。同じ3音でも、どの高さにどう広げるかで響きが完全に変わります。この配置をボイシング(voicing)と呼びます。
🔹 低い場所で密集すると濁ります
低い音域で3音を近づけて置くと音が団子になります。人の耳は低音域で複数の音が近くにあると、それをうまく区別できないんです。だから泥のような響きになります。
🔹 解決は広げること
いちばん簡単な方法はルートだけ1オクターブ下げることです。
ド・ミ・ソをそのままにする代わりに、ルートのドだけをぐっと下に落として、3rdと5th(ミ・ソ)は上に残してください。下が広く抜けて上が整理され、ずっとすっきりします。
構成音3つはそのままです。音を変えたのではなく、高さだけ移動させただけ。
ここでオクターブという言葉が出てきますが、同じ名前の音が一段上や下に繰り返される間隔です。低いドと高いドが1オクターブ違い。同じ音のように聞こえますが高さが違います。
🔹 もう少し
・3音を広く開くと爽やかに聞こえます
・密に寄せると分厚く、密度のある響きになります
・ベースがすでに低音を担当しているなら、ピアノの和音はわざわざ低く行く必要がありません
これも正解があるわけではなく状況次第です。ただ「濁っている」と思ったとき最初に確認する場所がボイシングだということだけ覚えておいてください。
⑦ 日本の楽譜で見かける表記 🇯🇵
海外の解説をそのまま読むと出てこない、日本特有の表記が2つあります。混乱の元になりやすいので触れておきます。
🔹 ハニホヘトイロ
日本語の音名です。楽譜に「ハ長調」と書いてあったら、それはCメジャーのことです。対応はこうです。
・ド = ハ(C)
・レ = ニ(D)
・ミ = ホ(E)
・ファ = ヘ(F)
・ソ = ト(G)
・ラ = イ(A)
・シ = ロ(B)
つまり「ハ長調」=Cメジャー、「イ短調」=Aマイナー。今日作った白鍵だけの世界がまさにハ長調・イ短調です。DAWで作業する分には使わない表記ですが、市販の楽譜や音楽の授業では今も現役なので、対応だけ知っておくと困りません。
🔹 進行を数字で呼ぶ習慣
日本のDTM界隈では、コード進行を数字やニックネームで呼ぶことがよくあります。スケールの何番目のコードかを並べた表記です。
・4536進行(王道進行)— 切なく盛り上がる定番。J-POPで大量に使われています
・カノン進行 — パッヘルベルのカノンと同じ流れ
・小室進行 — 90年代の日本のダンスポップで多用された流れ
今日作ったC→G→Am→Fは数字で言えば1564です。数字表記は慣れると便利ですが、今の段階では「そういう呼び方があるんだな」程度で十分。まず耳で覚えるほうが先です。
⑧ DAWが助けてくれる機能 🛠️
最近のDAWにはこれを代わりにやってくれる機能がけっこうあります。使わないと損です。
🔹 スケールのハイライト
ピアノロールでキーを設定しておくと、そのスケールに属する音だけが明るく表示され、それ以外は暗くなります。明るいマスだけ打てば外れません。今日習った「白鍵だけ使う」をDAWが自動でやってくれるわけです。
🔹 スケール強制モード
そもそもスケールから外れた音を打てなくしたり、打ったら近い音に寄せてくれる機能です。初心者の段階でとても役に立ちます。
🔹 コードトラック・コードパッド
コードネームを入れるだけで和音を自動で作ってくれて、ボイシングまで整えてくれる機能です。Cubase、Logic、Abletonにどれも似たものがあります。
ただしこれを使うにしても、なぜその音が集まったのかは一度覗いてみることをおすすめします。ツールが作ってくれた結果を分解するのが、いちばん速い勉強です。
⑨ Q&A 💬
Q. 音楽理論をまったく学ばなくてもいいですか?
A. 始めるぶんには学ばなくて大丈夫です。今日の方法で曲は作れます。ただ続けていると「なぜこの組み合わせは良くて、あれは違和感があるのか」が気になる瞬間が来ます。そのときに学べば理解がずっと速い。音を先に体験してから理論を見ると説明が付く感覚で、順序が逆だと暗記になります。
Q. コードネームは覚えないといけませんか?
A. ひとりで作業するぶんには必要ありません。ただ誰かと共同作業したり譜面を見る機会が出てくると、共通語が必要になります。急ぐことではないので、自然に目に馴染むまで放っておいても構いません。
Q. 構成音の順番を変えても同じコードですか?
A. 同じコードです。ド・ミ・ソをミ・ソ・ドの順に積んでもCのままです。構成音3つが入っていれば順番と高さは関係ありません。ただしいちばん下に来る音が変わると印象が変わって、これを転回(インバージョン)と呼びます。今は知らなくていいですが「順番を変えてもコードはそのまま」だけ押さえておくと楽です。
Q. 和音はいくつまで積んでいいですか?
A. 3つから始めて4つ(7thコード)に進むと表現がずっと豊かになります。ただ多く積むほど濁る危険も増えます。数より配置が大事です。
Q. 白鍵だけだと全部似た響きになりませんか?
A. 最初はそう感じるかもしれません。でも同じ和音でも順番、リズム、ボイシング、楽器を変えればまったく別の曲になります。実際、世の中のヒット曲の相当数が同じ和音をいくつか回し使いしています。差は和音ではなく、その上に何を乗せるかで生まれます。
⑩ 今日やること ✍️
読んで終わりだと何も残りません。これだけやってみてください。
1. ピアノ音源をひとつ立ち上げる
2. 下の4つの和音を括弧のまま打ち込む
3. それぞれ2小節ずつ、8小節を埋める
4. ルートだけ1オクターブ下げてみて、下げる前と聴き比べる
5. 和音をひとつ選んで3rdを半音上げるか下げてみる
打ち込む和音はこれです。
・C = ド・ミ・ソ
・G = ソ・シ・レ
・Am = ラ・ド・ミ
・F = ファ・ラ・ド
4番と5番が肝です。耳で違いを確かめた瞬間、ボイシングとメジャー・マイナーが何なのか説明なしで腑に落ちます。
数値もルールも正解ではなく出発点です。最終的な判断は耳がします。
おわりに
今日の内容を一行に圧縮するとこうです。
「白鍵から1・3・5番目の音を選んで積めば和音、名前はルートのアルファベットに性格を足しただけ。」
次回はこの和音の上にメロディを乗せる方法を扱います。気になることはコメントで教えてください。
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