古いレコードから四小節を切り取ってきました。ループを回してみたら曲が生き返ります。楽しいのはここまでで、そのあとに必ず出てくる問いがあります。
これ、このまま出していいのか?
答えはご存じでしょう。だめです。ところがその先がなかなか出てきません。許可を取れという話はどこにでもあるのに、誰にどんな書類を送っていくら払うのかを最後まで書いた記事は意外と見当たりません。
今日はその手順を最初から最後まで追いかけます。いくらかかるのか、何か月待つのか、断られたらどんな手が残るのかまで。
① 許可を取る先はひとつではなく二つ 🎫
ここで最初につまずきます。
人の音源を切って使うときは、二か所から許可を取ります。片方だけでは取ったことになりません。
🔹 ひとつめ、録音物への許可
その音源ファイルそのもの、つまり実際に録音された音を使う権利です。ふつうマスターと呼びます。持っているのはたいていレコード会社。自主リリースならアーティスト本人ですし、古い音源ならカタログを買い取った会社や遺族のこともあります。
🔹 ふたつめ、曲そのものへの許可
楽譜に書かれる側です。メロディ、歌詞、和声。持っているのは作詞作曲者で、たいていパブリッシャー(音楽出版社)が代わりに管理しています。共作者が複数いてそれぞれ出版社が違えば、その分だけ相手が増えます。
📌 なぜわざわざ二つに分かれているのか
同じ曲でも、誰が演奏したどの録音かは別の財産だからです。同じ歌を三人がそれぞれ録音すれば、曲はひとつなのに録音物は三つになります。だから権利も別々に動きます。
この区別が効いてくる場面が後で出てきます。自分で弾き直せば、二つのうち片方が要らなくなるんです。 ⑦で扱います。
② では誰に連絡するのか 🔍
名前がわからないとメールが出せません。探す順番があります。
🔹 録音物の側 — まずレコード会社
ジャケットのクレジットを見ます。レーベル名が書いてあります。厄介なのは、古い音源ほどそのレーベルがもう無かったり、カタログが何度も売られていたりすることです。そのときは、そのレーベルを買収した会社をさかのぼって探します。
メジャーレーベルにはたいていライセンス部門があります。会社名と一緒にサンプル使用の問い合わせ先を検索すれば窓口が出てきます。
🔹 曲の側 — まず著作権管理団体のデータベース
作曲者とパブリッシャーは管理団体の検索で確認します。アメリカならASCAP・BMI・SESAC、イギリスはPRS、ドイツはGEMA、日本はJASRAC、韓国は韓国音楽著作権協会です。曲名で検索すれば登録された作家と出版社が出てきます。
🔹 クレジットで実際に見るところ
ジャケット裏やストリーミングのクレジットで、見るべき項目は決まっています。
・℗マークの横の社名と年 — これが録音物の持ち主です。ⓒではなく℗です
・作詞・作曲欄に書かれた名前 — 曲側の相手です。名前が五つあれば相手も五人かもしれません
・Published by の表記 — 出版社が書いてあれば、そこが窓口です
ⓒと℗を混同する方が多いのですが、ⓒが曲、℗が録音物です。今日の話の二本の筋が、この二つの記号にそのまま分かれています。
🔹 データベースで見えるもの
管理団体で検索をかけると、曲ひとつに持分(%)が付いて出てきます。作家Aが50%、Bが25%、Cが25%といった具合です。ここから二つわかります。
ひとつは相手が何人いるか。 もうひとつは誰か一人が断ったら止まるか。 持分の大きい人が事実上の決定権を握っていることが多いので、そこから当たるのが早いです。
🔹 どうしても見つからないとき
見つからなければ許可は取れず、許可がなければ使えません。残念ですがこれが結論です。「持ち主がいないから勝手に使う」は通りません。
ただ、まったく出てこないケースは思ったより少ないです。たいていは会社が何度か売られて名前が変わっただけなので、買収の履歴を一段ずつたどれば今の窓口にたどり着きます。
💡 時間を節約する近道
権利関係が込み入っていそうなら、クリアランスの代行業者を使う手があります。誰が何を持っているか、こういう依頼にはどんな条件が付くかを知っている人たちです。もちろん代行手数料は別にかかります。
もうひとつ、あらかじめ許可を整理した音源だけを集めたサービスもあります。古い音源を定額で使いながら、クリアランスはサービス側が代わりに処理してくれる仕組みです。権利者を自分で追いかけなくていいのが一番の利点です。
③ 何を送るのか 📨
連絡先が見つかったら依頼書を書きます。入れるべき項目は決まっています。
🔹 原曲の情報
曲名、アーティスト、どのアルバムのどのトラックか。そして何分何秒から何秒までかを正確に。
🔹 自分の曲
デモか完成版を送ります。相手は自分の音源がどんな曲にどう乗るのかを聴いて判断します。
🔹 どう使うのか
サビの裏に敷くのか、曲全体を支えるループなのか、一度かすめるだけの飾りなのか。曲の中で占める比重がそのまま値段なので、ここが一番大事です。
🔹 どこに出すのか
ストリーミングだけか、フィジカルも出すのか、どの国まで出すのか、規模はどれくらいを見込んでいるか。
⚠️ デモを送ることと公開することは違います
許可前のデモは、権利者に送るところまでで止めます。DJセットで回したり、配信で流したり、SNSに上げたりすれば、その瞬間に無許可公開です。人に渡してその相手が上げても、責任は送った側に返ってきます。
④ いくらかかるのか 💸
一番気になるところでしょうが、先に答えを言うとサンプル次第で本当に変わります。それでも業界で通っている相場はあります。
🔹 構造はたいてい前金 + ロイヤリティ
一度払う前金があり、その上に曲の収益の何パーセントかを分け続けるロイヤリティが乗ります。前金があとで入るロイヤリティから差し引かれる形(アドバンス)になることもあります。
ここにロールオーバーが付く場合もあります。販売数がある線を超えたら、そこから追加でいくら払うという条件です。
🔹 前金の相場 (録音物・曲それぞれ)
・無名の音源やインディーリリース — それぞれ500〜5,000ドル
・知られたヒット曲 — それぞれ5,000〜50,000ドル
・誰もが知っている音源 — それぞれ25,000ドルから、上は青天井
許可を取る先が二つですから、合計は上の金額の二倍と見てください。
🔹 ロイヤリティ
曲の収益の15%から50%の間で決まります。サンプルが曲の中心にあるほど、聴いてすぐわかるほど上がります。
📌 この数字が語っていること
一人で作っている人が有名なサビをまるごと持ってくるという話は、そもそも成り立ちません。 予算が数十万円なら、そういう音源は候補から外すのが正しいです。
代わりに、見方を変えるとこうなります。無名の音源、インディーリリース、連絡がつく個人アーティスト。 こちらは金額の桁が違いますし、何より人が直接返事をくれます。実際この経路でまとまることのほうがずっと多いです。
🔹 交渉の余地があるところ
見積もりが出たからといって、それが最終値ではありません。動かせる点がいくつかあります。
・比重を下げる — 曲全体を支えていたループを一区間だけに減らせば条件が下がります。曲を直して値段を下げるわけです
・地域を絞る — 最初から全世界が要らないなら、リリース予定の地域だけ取る手があります。ただし⑧で見る理由からおすすめはしません
・前金とロイヤリティを入れ替える — まとまった金がなければ、前金を下げてロイヤリティを上げる形で提案してみる手があります。相手も曲が当たれば多く受け取る構造なので、通ることがあります
・加工の度合いを伝える — 原曲がそのまま聴こえるのか、聴き分けられないほど変わっているのかで、相手の判断が変わります
📌 交渉より先に計算すること
前金を払える金があるかより、ロイヤリティを引かれても残るものがあるかを先に計算してください。ロイヤリティ50%が付いた曲は、どれだけ当たっても半分は人のものです。曲が長く生き残るほど、その条件も一緒に付いてくるわけです。
💡 サンプルだけで作ったアルバムを出した人はどうなったか
1996年に出た、最初から最後までサンプルだけで作られたことで知られるアルバムがあります。作った人がクリアランス費用のせいでほとんど儲からなかった、という話をよく見かけますが、本人の発言を探してみると少し違います。
彼はアルバムを出すとき、所属会社からこう頼まれたと語っています。「いちばん目立つサンプルを十個選んでくれれば、そこから片づける。」 全部を一度に整理したのではなく、危ないものから順に片づけたわけです。
彼が難しかったと挙げたものも、結局は金額ではありませんでした。求めてくる額が現実離れした相手、サンプリングそのものを嫌う相手、そしてそもそも見つからない相手の三つです。最後についてはこう言っています。「レーベルが消えたか大企業に吸収されて、自分たちが何を持っているのかもテープがどこにあるのかもわからない。」
そして30年が過ぎた2026年、なぜサンプル中心の作り方をやめたのかと問われて、こう答えます。「サンプルが多いせいで、結局自分のカタログの15%しか持てなくなるんじゃないかと考えたことがある。」
📌 だから正確に言うと
問題は「制作費で使い果たした」ではなく、「持分が出ていき続ける構造」でした。前金は一度払えば終わりですが、ロイヤリティは曲が生きているあいだずっと付いてきます。さきほどロイヤリティから先に計算してくださいと書いた理由がこれです。
⑤ どれくらいかかるのか ⏳
3か月から6か月を基本と見ます。もっとかかることも珍しくありません。
🔹 なぜそんなに待つのか
大手のライセンス部門は依頼が溜まっていて、返事が遅いです。権利者が複数いればそれぞれから返事が要りますし、一人が返さなければそこで止まります。出版社が承諾しても作家本人の確認がさらに要ることもあります。
⚠️ だから順番を逆にしてはいけません
リリース日を先に決めてからクリアランスを始めると、まず間違いなくずれ込みます。 配信会社に登録して承諾を待つ状態が一番よくありません。曲を作る前、遅くとも仕上げる前に可能性を打診するのが順番です。
💡 実際にずれ込んだアルバム
サンプルを大量に使ったあるアルバムは、素材3,500個のうち900個が許可の対象でした。それを片づけているうちに、国ごとに発売日がずれていきました。本国で2000年11月に出たアルバムが、イギリスは翌年4月、アメリカはその年の11月に出ています。作った本人は後にこう言いました。「許可を全部取り終えたとき、アルバムは少し薄まっていた。」 承諾が下りなかった素材を抜くしかなかったからです。
⑥ 断られたら終わりなのか 🚪
断りはよくあります。そして相手に理由を説明する義務はありません。
🔹 よくある断りの理由
・サンプリングを一切受けない — 特定のアーティストや遺族が方針として決めている場合があります
・使われ方が気に入らない — 歌詞が荒いとか、政治的だとか、原曲のイメージに合わないと見れば断ります
・金額が合わない — 見積もりが予算を超えれば事実上の断りと同じです
💡 断りが惜しい本当の理由
④で触れたそのアルバムの作り手は、断りについてこんな言葉を残しています。拒まれても押し通せたことがある一方、最後までだめだったこともある。だめだったときに惜しいのは、自分の曲が出せないことだけではないと。「自分の音楽を通じて原曲のアーティストが再発見される機会も、一緒に消える。」
実際、サンプリングを歓迎する原作者も少なくありません。忘れられていた自分の音楽が、まったく違う文脈でまた鳴るのをいいことだと受け取る側です。依頼書でクレジットの書き方を先に伝えることに意味があるのは、そのためでもあります。
🔹 断りは判定ではありません
断られたことは「あなたの使い方が違法だ」という意味ではありません。ライセンスの経路が閉じただけです。ただし実務では、閉じたなら使えないものとして扱ってください。自分で「このくらいなら平気だろう」と判断して出すのは危ないです。
🔹 断られる理由を減らすには
承諾率を上げるコツというより、断る理由を先に潰しておくという感じです。
・完成版を送ります。 デモより完成版のほうが判断しやすく、誠意としても伝わります
・どこにどう使うのかを具体的に書きます。 「サンプルを使いたいです」だけでは返事が来ません
・クレジットの書き方を先に提案します。 原曲と原作者をどう記すか伝えると印象が変わります
・返事を急かしません。 数か月が基本だと知って出した依頼と、知らずに出した依頼は伝わり方が違います
🔹 残る選択肢は三つ
1. サンプルを抜く
2. 別の素材に替える
3. 自分で弾き直す
3番が今日の話の転換点です。
⑦ 弾き直せば一か所で済みます 🎹
原曲のメロディやリフを、元の音声を使わずに自分で弾き直して録音するやり方があります。インターポレーションと呼びます。
🔹 なぜこれが有利なのか
①で許可を取る先が二つだと書きました。弾き直せば元の録音物を使わないので、録音物側の許可が要らなくなります。 曲側だけ取れば済みます。
相手が半分に減り、たいてい費用も下がります。何より録音物の持ち主に断られても迂回できます。
🔹 それでも費用はかかります
曲側のライセンスで、前金2,000〜25,000ドル、パブリッシングのロイヤリティ25〜50%あたりが付きます。安いというよりそこまで高くないというほうが正確です。
🔹 最近のポップで増えている理由
2020年代に入って、90年代・2000年代のR&Bのサビを歌い直した曲が目に見えて増えました。クリアランスの負担が半分というのが大きな理由です。加えて、音源からパートを分離してくれるツールが身近になり、原曲のパートを取り出して聴きながら再現するのが以前より楽になりました。
⚠️ 勘違いしやすいところ
ありふれたコード進行やスケールはそもそも保護の対象ではないので、インターポレーションと呼ぶまでもありません。 そういうものはそのまま使えます。問題になるのは、聴いてそれとわかるメロディ・サビ・歌詞を再現するときです。
⑧ 契約書で見落としやすい項目 📋
承諾をもらって終わりではありません。取れた許可がどこまで及ぶのかを見ます。
🔹 確認する四つ
・用途 — この曲、このバージョンだけか。リミックスや拡張版は別か
・地域 — 全世界か特定の国か。あとで海外配信を付ける気があるなら、最初から全世界で取る
・フォーマット — ストリーミング、ダウンロード、フィジカル、映像への同期。ひとつずつ別に書かれます
・期間 — 永続か何年か
取れた範囲を超えて使えば、その部分はまた無許可です。
💡 これを見落として20年が飛んだ例
1989年から90年代初めにかけて出たあるヒップホップグループのアルバムが、2023年3月までストリーミングに上がりませんでした。 理由がまさにこれです。
これらのアルバムが出たときに取ったサンプルの許可は、フィジカル盤の頒布の範囲で書かれていました。当時はストリーミングというものが無かったからです。ですからストリーミングに載せるには、数百のサンプルの許可を全部取り直す必要がありました。
権利が会社のあいだを何度か移るうちに誰もその作業を引き受けず、2021年にカタログを買った会社が契約書を一枚ずつ全部めくって整理して、ようやく解けました。20年以上かかった計算になります。
📌 だから今日つくる曲なら
今は無い流通の形が10年後に生まれるかもしれません。できるだけ広く、そして永続で取っておくほうがいいです。条件が少し上がるとしても。
⑨ サンプルパックはなぜそのまま使えるのか 📦
ここで自然に出てくる問いがあります。サブスクで落としたループは、なぜ何の手続きもなく使えるのでしょう。
🔹 すでに許可が付いているからです
サンプルパックやサブスク型のサウンドサービスの素材は、最初から「あなたの曲に使っていい」という条件で作られ配られたものです。月額や購入代金の中にその許可が含まれています。だから連絡する先がありません。
リリース数にもストリーミング数にも上限がなく、映画やゲームへの同期に使えるのがふつうです。
🔹 ただしできないこともあります
・素材そのものを再配布できません。 落としたループをファイルのまま人に渡したり売ったりするのはだめです
・自分のサンプルパックに入れて売れません。 加工しても同じです
・独占ではありません。 同じループを落とした人が何万人といて、その人たちにも同じ権利があります
🔹 だから実際には
サンプルパックのループをまるごと敷くと、人の曲と重なることがあります。切って使うか、ピッチを変えるか、レイヤーを重ねて自分の音にするほうが安全です。法律の問題ではなく、曲が重なる問題です。
⚠️ 人のビートを買ったとき
ビートにサンプルが入っていれば、その責任は曲を出した人にも来ます。 「買って使っただけ」は盾になりません。ビートに使われたサンプルが何なのかを、制作者から書面で確認しておいてください。 制作者が許可を取っていたとしても、その許可に自分のリリース形態まで入っているかはまた別です。
⑩ 日本と韓国は窓口がどう違うか 🗾
大枠は同じです。録音物と曲、二本の筋というのはどこでも変わりません。ただ呼び名と窓口が違います。
🔹 日本
録音物の側は原盤権と呼び、著作隣接権に入ります。窓口はレコード会社や原盤制作者です。曲の側はJASRACの作品データベースで管理状況をまず確認します。管理対象外だったり、出版社が直接管理している表示が出たら、そちらへ別に連絡します。
日本の著作権法にはアメリカのフェアユースのような包括的な免責規定がないので、短く切ったとか加工したというだけで自動的に大丈夫になることはありません。
🔹 韓国
もう一段はっきり分かれます。著作権(作詞作曲)のほかに、著作隣接権がレコード製作者と実演家の両方にかかります。つまりレコード会社だけでなく、演奏した人の権利も別に見ます。
曲の側は韓国音楽著作権協会の検索で管理曲かどうかを確認し、管理曲でなければ著作者に直接連絡する流れです。
🔹 海外の音源を国内で使うなら
いちばん多い場面でしょうが、窓口は原曲のある国の側です。国内の団体を通しても結局その国の管理団体か出版社に渡りますし、録音物はそもそも管理団体を経由せず、そのレコード会社と直接話すことになります。
ですから言語と時差がそのままかかる時間に足されます。さきほど3〜6か月と書いたのは現地で進める場合の話で、国境をまたぐならもっとかかると見るのが妥当です。
📌 まとめると
呼び名も窓口も国によって違いますが、「録音物は別、曲は別」という骨格はどこでも同じです。 この一行さえ覚えておけば、どの国の資料を読んでも迷いません。
⑪ Q&A 💬
Q. 1秒だけ切って使っても許可は要りますか。
A. 要ります。長さで免除される基準はありません。聴いてそれとわかるなら対象です。「何秒までなら平気」という話は広まっていますが、根拠がありません。
Q. ピッチを変えて細かく刻んで、原曲がわからないようにしました。
A. 加工したからといって元の権利が消えるわけではありません。ただ、聴いてもわからないほどなら実際に問題になる可能性は下がります。これは法律上安全になるという意味ではなく確率の話で、判断は結局もめてからでないと出ません。
Q. 無料で配るミックステープでもですか。
A. お金を取らないから免除、ということはありません。無料公開も公開です。
Q. かなり古い音源ならそのまま使えるのでは。
A. 曲の保護期間が過ぎていても、その曲の特定の録音物は別の権利なので、まだ生きていることが多いです。1920年代の曲を1970年代に録音した音源なら、曲は自由でも録音物はそうではありません。この区別を落とすとつまずきます。
Q. 見つからずに済んでいる人も多いようですが。
A. 以前よりずっと難しくなりました。音声の指紋技術が自動で照合しますし、動画プラットフォームは自動判別で収益を原権利者に回すか動画をブロックします。曲が当たるほど見つかる確率が上がるのも厄介なところです。
Q. 昔自分が出した自分の曲をサンプリングするのは。
A. 録音物も曲も自分で持っているなら手続きは要りません。ただし当時レコード会社と契約していたなら、録音物は会社のものかもしれません。 契約書を確認してみてください。
Q. YouTubeに参考として上げたビートにサンプルが入っています。
A. これも公開です。自動判別に引っかかれば収益が原権利者に回るか、動画がブロックされます。チャンネルに警告が溜まるとさらに面倒になります。
Q. 最近のパート分離ツールで原曲からドラムだけ抜いて使うのはどうですか。
A. 分離したという事実で権利が変わることはありません。そのドラムは今もその録音物の一部です。むしろ分離ツールが身近になって、取り出すのは楽になったのに判断の基準はそのままなので、以前より紛らわしくなっています。
Q. 権利者から返事がまったく来ません。
A. 無返答は承諾ではありません。「三回送っても返事がないから使った」は根拠になりません。返事が無いなら無いなりに閉じたと見て、別の道を探すのが正しいです。
Q. では結局サンプリングはするなということですか。
A. 違います。手の届く素材を選べという話です。無名の音源、インディーのアーティスト、あらかじめ許可の整理されたサービス、そしてインターポレーション。道は四つあります。塞がっているのは「なんでも切って使う」だけです。
⑫ 今日やること ✍️
サンプルの入った作業ファイルがひとつあれば十分です。
1. プロジェクトを開いて外から持ってきた音を全部書き出す — ドラム一発まで
2. 各項目を三つに分ける — サンプルパックやサブスクで落としたもの / 自分で録ったもの / 人のリリース音源から取ったもの
3. 三つめだけ残す。ここからが今日の話の対象だ
4. その素材の原曲名とアーティスト、そして何分何秒の区間かを書く
5. 著作権管理団体の検索で作曲者と出版社の名前を確認する — ここまでは無料だ
6. ジャケットのクレジットからレーベル名を確認する
7. 二つの名前を見て判断する — 連絡がつきそうか、それとも予算の外か
8. 予算の外ならその場で決める — 抜くか、替えるか、弾き直すか
5番と6番を今日やってみてください。 検索を何回かするだけなのに、これをやると「行けるサンプル」と「無理なサンプル」が見えはじめます。その感覚がつくと、次からは素材を選ぶ段階から変わります。
そして三つめが空なら、おめでとうございます。今日は心配することがありません。
⚠️ 実際のリリースを控えて判断がつかないなら、法律の専門家に確認するほうが安全です。この記事は手順の全体像をまとめたもので、個別の事情は契約書と国によって変わります。
おわりに
今日の内容を一行にまとめるとこうなります。
「サンプリングで争われるのは似ているかどうかではなく許可を取ったかどうか — そしてその許可は、録音物と曲の二か所から取る」
みなさんはサンプルを使うとき、クリアランスを先に考えますか。それとも音から選んで後で悩みますか。コメントで教えてください。
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